人々による賃金の現実の見方と理想
2013年04月04日
最近、賃金引上げを発表する企業が相次いでいる。従業員が目覚ましい成果をあげたから、ということからでは決してなさそうである。
人々は賃金などについて、現実と理想をどのように考えているのだろうか。多少データは古くなるが、基本的な点にはあまり変化がないと考え、下図の世論調査によって見てみる。
やはり成果をあげた人が現実には高い地位と多くの報酬を得ているとみている割合が半数程度である。年齢の高い人が得ているとする割合は5年間で減少した一方、努力をした人が得ているとする割合は増加している。しかし、いずれも実績をあげた人とする割合に比べれば水準はかなり低い。なお、誰でも同じくらいに得ているとする人はほとんどいない。
図表にはないものの、平成19年の結果を男女別・年代別に見ると、男性では実績をあげた人が得ているとする割合は40代が最大で57.1%で、それより若手の30代の54.7%や、20代の53.0%の方が低い。50代も52.6%と若手と同じような水準である。一方、年齢の高い人が得ているとする割合は20代が17.2%、30代が20.7%、40代が15.3%、50代が10.2%とあまり差はなく、若い世代の年功への不満はそれほど目立たない。女性についても、同様の傾向がある。
一方、理想となると様子は一変する。下図のように、努力をした人が地位と報酬を得るべきであるとする割合が過半数で圧倒的多数を占め、それも5年間で増加している。現実には実績をあげた人が得ているとする割合が5年間で増加しているのに反して、理想は逆だったわけである。実績をあげた人が得るべきであるとする割合は平成19年では3割を切っている。年齢の高い人が得るべきであるとする人は、ほとんどいない。なお、平成19年は、男女とも、どの年代でも、努力をした人が得るべきであるとする割合が、実績をあげた人とする割合を上回る。
以上は、極めて日本的な結果なのかもしれない。必ずしも成果があがっていなくとも、努力をした人が高い地位と多くの報酬を得ることは人々に受け入れられやすい。ただし、努力もせず、当然成果もあがらず、単に年齢が高いからと地位と報酬が高いことは、ほぼ否定されるであろう。
一方、経営者の側は、成果だけでなく努力も認めないと従業員の意欲が失われかねないことも考慮する必要があるのかもしれない。成果主義にまつわる問題点は、その解釈の違いも含めいろいろ指摘されているところである。成果一辺倒ではなく努力も認めることが、トッププレイヤーでなくてもがんばる層の厚さ、チームワークの良さ、裏方に徹してサポートする者の活躍、短期的でなく長期的な目標へのチャレンジ、などにつながり、それらはもともと日本の強みだったのかもしれない。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
上場オーナー企業と公開買付制度・大量保有報告制度の見直し
2026年5月1日に大量保有報告書等の提出義務が発生する場合も
2026年05月15日
-
デジタルアイデンティティ・デジタルクレデンシャルをめぐる取組みと実装技術の論点整理(第1部)
デジタルアイデンティティの基本像と、EUDIウォレットにみる制度化・実装動向
2026年05月14日
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、わが国では潜在成長率が低迷しているのか?
高市政権は成長戦略を強化する方針だが、①労働、②資本、③TFP(全要素生産性)という3つの要素をバランス良く底上げする必要
2026年05月13日
-
AIが変える議決権行使助言業
中立性・客観性確保のための利用を訴求へ
2026年05月13日
-
中東リスクがASEAN進出企業に与える影響の差は、どのように生じているか?
2026年05月15日

