アメリカのリーダーシップ

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2013年02月21日

  • 木村 浩一

CIAなどの情報機関を構成メンバーとするアメリカの国家情報会議(NIC、National Intelligence Council)が2012年12月に発表した“Global Trends 2030”は、中国のGDPが2022年にアメリカを追い抜き、GDPベースでは中国が世界一になるものの、2030年の世界では、アメリカも中国も覇権国家にはなっていないだろうと予測している。

NICは、また、GDP、人口、軍事費、技術力のハードパワーに、健康、教育、ガバナンスのソフトパワーを加えたグローバル・パワー・インデックス(世界全体で100)を作成しているが、そのインデックスによると、2010年でアメリカが24、EU22、中国11、インド5、2030年ではアメリカ19、EU17、中国15、インド8になると予測し、パワーの拡散が2030年のメガトレンド、としている。GDPでは中国がアメリカを上回るものの、ソフトパワーを含めた総合的影響力で、なおアメリカは引き続き国際政治におけるリーダーシップをとり続けていく、と分析している。

“Global Trends 2030”は、アメリカ一極体制は終わり、パックス・アメリカーナは縮小していくものの、アメリカに取って代わるグローバル・パワーは出現せず、中国など非OECD諸国も、自国の経済発展のためにはアメリカが第二次世界大戦後築いた国際秩序にいやいやながらも従わざるを得ないだろう、と予測している。

しかし、先週行われたオバマ大統領の一般教書演説にみられるように、財政赤字や経済力の相対的地位低下によりアメリカの政治は今後内向きになり、国際政治へのコミットメントを避けていくと思われるが、国際政治の現実は、アルジェリアでの人質事件などの国際テロへの対応や民主主義体制の維持のため、アメリカに代わってリーダーシップを発揮できる主体がない以上、引き続きアメリカに依存せざるを得ない状況が、今後も続くのではないか。

日本やEUなど民主主義先進諸国は、アメリカがリーダーシップを発揮しやすいように、防衛力の強化、自由貿易体制の推進、国際民主主義体制の拡大などの貢献を一層求められる。日本は、バブル崩壊後20年間、内向きの政治に終始してきたが、パワーの拡散した世界では、応分以上の負担が必要になるだろう。中でも、GDP世界3位の経済大国として、日本経済の復活は、最も世界に貢献する道であろう。

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