女性活用の国際比較

2012年3月12日

「女性の活用」が叫ばれて久しい。少子高齢化により労働力人口の減少が見込まれるなか、女性の活用はわが国経済の活性化のためにも重要な課題だろう。

わが国の労働力人口に占める女性の割合は2010年に49%と決して低くはないが、その41%がパート・アルバイト、13%が契約社員や派遣社員で、正規職員の割合は46%にすぎない(※1) 。正規職員のうち管理職に占める女性の割合は、1989年から2010年までに、係長級で5%から14%、課長級で2%から7%、部長級で1%から4%と上昇しているものの(※2)、マネジメントに携わる女性はまだまだ少数派である。

諸外国に目を転じれば、マネジメントにおける女性の活用が進んでいる国は多い。ILOの統計では、管理職に占める女性比率は2008年にデータのある57カ国の平均で30%である。女性比率が高い国ではフィリピン(53%)やカザフスタン(49%)など、意外なことに途上国も上位に挙がる。先進国では米国(43%)やフランス(39%)、ドイツ(38%)などが上位国だ(※3)。これらの国々と比べると、日本の現状はやはり見劣りする(※4)

マネジメントにおける女性活用のドライバーとなっているのが、組織における女性比率を定めるクオータ制だ。クオータ制発祥の地ノルウェーでは、2003年に上場企業へのクオータ制導入を決定し、上場企業の取締役女性比率は2003年の6%から2010年に44%へと上昇した(※5)。ノルウェーの例はしばしば先進事例とされ、欧州委員会は欧州全域でノルウェー同様の上場企業へのクオータ制導入を検討している。

しかし、ノルウェーではクオータ制完全施行前に、適用を嫌って上場廃止する企業が相次いだとの報告もある(※6)。取締役に適した女性が多くは育っていないなかで、クオータ制導入に踏み切る難しさもありそうだ。

一方、クオータ制を導入していない米国でも、女性の管理職比率は1973年の19%から2008年に43%に上昇している(※7)。義務付けがないなかで管理職の女性比率が4割超にまで上昇している事実は、マネジメントにおける女性活用の効用を示しているとはいえまいか。マネジメントにおける女性の活用は、異なる視点導入によるマネジメントの有効性改善、ステークホルダーとの関係改善やリスク低減に役立つとの報告もある(※8)

ただし、現状では必ずしも女性の活用が企業業績の改善に結びついているわけではない。女性活用を進めれば必ず業績が改善するわけはなく、経営的な発想で戦略的に女性を活用するには工夫が必要だ。とはいえ、わが国では女性の大学進学率は2010年に45%に達しており、高学歴の優秀な女性は数多くいる(※9)。生産年齢人口が減少するなか、これらの女性のリソースを活用しない手はない。そのためには、女性の活用を妨げている、長時間労働の改善や子育て支援サービス不足の解消に向けて、政府側でも企業側でもさらなる取り組みが必要だ。官民連携の取り組みにより、日本でもさらなる女性活用が進むことを期待したい。

(※1)内閣府(2011)『平成23年版 男女共同参画白書』雇用形態別にみた雇用者の構成割合は役員を除いた数値。
(※2)内閣府(2011)前掲
(※3)ILO (2012) LABORSTA Labour Statistics Database.
(※4) 同統計では日本の管理職に占める女性比率は9%とされている。ただし、日本とベネズエラはその他の国と異なる定義を採用しているため、単純比較はできない。多くの国は自営業やマネジメント以外の仕事を兼務する場合も含む値だが、日本は自営業やマネジメント以外の仕事を兼務する場合は除外している。
(※5)IFC/CWDI (2010) IFC/CWDI 2010 Report: Accelerating Board Diversity.
(※6)御供理恵(2011)「欧州では北から南までクオータ制を続々導入」『週刊東洋経済』(10月15日)東洋経済新報社 上場企業の取締役会に対し、その4割を女性とすることを義務づけた。2003年にクオータ制導入を決定し、2008年に完全施行した。2006~2007年に49社が上場廃止したが、クオータ制適用を避けるために非上場化した可能性が高いとしている。なお、ノルウェーの上場企業数は2011年に139社。
(※7)ILO(2012)前掲
(※8)Adams, R., Ferreira, D. (2009) “Women in the boardroom and their impact on governance and performance.” Journal of Financial Economics. 94(2), Srinidhi, B., Gul, F., Tsui, J. (2011) “Female Directors and Earnings Quality.” Contemporary Accounting Research. 28(5) など。
(※9)内閣府(2011)前掲

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