「健全な発展」が求められる中国の風力発電

2011年11月7日

  • 環境・CSR調査部 横塚仁士
中国では、石炭や石油に依存するエネルギー源の多様化や電力不足の改善、さらには地球温暖化問題への対応として「再生可能エネルギー」への期待が高まっている。中国政府が2007年に同分野では初となる国家計画を策定して目標値を設定するなど、国を挙げて普及を進めている。中でも特に成長が著しいのが風力発電であり、中国電力企業連合会によると2010年末時点の中国の風力発電の設備容量は3,107万kWに達した。この数値は2020年をターゲットとする国家目標を上回っており、政府の想定以上の成長を遂げている。

中国の風力発電に関する動向として、中国のエネルギー主管部門である国家発展改革委員会と国際エネルギー機関(IEA)が共同でまとめた「中国風力発電発展ロードマップ2050(※1)が挙げられる。同報告書では2050年時点の中国の風力発電の設備容量を10億kWに拡大し、中国内の電力生産に占める風力発電の比率を現在の1%から2050年に17%に引き上げるという野心的なものである。

また、第12次5カ年計画(2011年~2015年)において風力などの新エネルギー産業が「戦略的新興産業」の一つとして指定され、風力は次世代の主力エネルギー源として普及が進められるほか、輸出産業として海外市場の開拓を目指すことも強調されている。先に挙げた「中国風力発電発展ロードマップ2050」では、関連投資額は12兆元(約148兆円)に達すると見込まれており、ビジネスとしても強い関心が寄せられている。

これらの情報を見る限り、中国の風力発電と関連産業の未来は明るいように思えるが、実際は多くの課題を抱えている。設備の導入が急速に進む一方で系統連系されていない設備も多い(※2)ほか、政府による振興策などにより多くの地方で設備の拡大が進んだことで設備過剰が生じており、「風力バブル」化しているとの指摘もある。更に、発電設備の倒壊や部品の故障などの報告件数が増えるなど品質面での問題も目立つようになっており、国家発展改革委員会傘下のエネルギー局が企業側へのチェックを強める姿勢を打ち出している(※3)

中国の将来の姿を考えた場合、エネルギー問題は食糧や水などと並ぶ重要な課題であり、再生可能エネルギーの拡大は中国のエネルギー政策上、必要不可欠なものであると考えられる。しかし、上述したような問題が生じている状況を考えると、現在の急拡大路線では設備の増強が先行し、本来の目標であるエネルギー源の多様化などの実現から離れてしまうおそれもある。そのため、中国政府には品質や量、さらには各地域間のバランスのとれた発展をもう一度考慮したうえで、「健全で持続可能な」拡大路線を追求することが求められているのではないだろうか。

(※1)IEAウェブサイト内の2011年10月20日付ニュースより。報告書は12月に公表される予定である。
(※2)2011年10月26日付国際新能源網ウェブサイト内の記事より。
(※3)2011年10月19日付経済観察網ウェブサイト内の記事より。

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