三角合併

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2007年05月02日

2007年5月からスタートする会社法の「合併等対価の柔軟化」によって「三角合併」という合併スキームが可能となる。「三角合併」とは、買収する会社自身ではなく、その親会社の株式を使った合併である。通常、2つの会社が合併する場合、合併で吸収されて消滅する会社の株主には、合併比率に応じて、存続会社の株式が交付される。それに対して「三角合併」の場合、消滅する会社の株主には、存続会社の親会社の株式が交付される。つまり、消滅会社の株主は、存続会社ではなく、存続会社の親会社の株主になる。

外国企業が自社の株式を対価に日本企業を買収可能に

「三角合併」は日本企業同士でも利用可能である。ただ、一般には、外国企業が日本国内に設立した現地法人を介して日本企業を買収するために利用されると言われることが多い。それは次の事情による。

「三角合併」の最大のメリットとして指摘されるのは、現金を一切使わず株式のみで他の企業を買収できる点である。その観点からすれば、日本企業の場合、わざわざ「三角合併」を利用しなくても、既存の合併、株式交換などを活用すれば、ある程度、目的を達することが可能であった。ところが、外国企業の場合は、既存の合併や株式交換などを活用して、直接、日本企業と国境をまたいだM&Aを行うことはリーガル・リスクなどの点から無理があった。そのため、外国企業が現金を一切使わずに自社の株式のみで日本企業を買収しようとすれば、事実上、(日本に設立した現地法人を介した)三角合併が利用できないと難しかったのである。

ただし、基本的には「友好的M&A」の仕組み

「三角合併」も合併の一形態である以上、必要な手続きも合併とほぼ同じである。つまり、双方の経営陣が合併条件などについて協議を行った上で、合併契約書について合意し、それを株主総会で承認するという流れになる。その意味では「三角合併」は、基本的には「友好的M&A」の仕組みだと言える。もちろん、例えば、第一段階として、敵対的TOBなどによって相手の経営権を獲得した上で、第二段階で「三角合併」を実行に移すことは考えられる。しかし、わが国においては、主に税制上の問題から、キャッシュ以外の資産、例えば、株式を対価としてTOBを行うことは技術的に難しい。その意味では、この方法を用いた場合、キャッシュを使わずに買収できるという「三角合併」のメリットは、大きく失われることになるだろう。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 横山 淳