アジアンインサイト
非常に難解なインドネシアの法制度

2014年12月4日

  • アジア事業開発グループ コンサルタント 中川 葉子

先日インドネシアにて、日系企業等にヒアリングを行った。各社ともインドネシアの安定的な経済成長力、中間層人口の厚み、旺盛な消費意欲など様々な面において、同国市場の大きなポテンシャルを目の当たりにし、今後も積極的な事業拡大を模索している様子であった。

一方で、現状ビジネス上の困難を感じている点として、同国の法制度が非常に難解であることを筆頭に挙げる企業が多くみられた。ここではインドネシアの法体系の特徴を簡単に説明するとともに、ヒアリングをもとに具体的な事例を挙げ、日系企業が進出する際に注意すべき点について考察する。

インドネシアの最高法規は憲法であり、その下位法令として、国民協議会令、法律・法律に準ずる政令、政令、大統領令、地方自治体令等の順に序列を成している(図表1)。また、これらの法令の施行規則として、国民議会、最高裁判所、会計検査院、インドネシア銀行(中央銀行)、省庁などの諸機関が「規定」を策定している。

インドネシアの法令の序列

(a)~(f)の各法令および規定の立法プロセスは「法律2011年第12号」に記載されている。例えば「法律」は、国民議会議員または政府による法案提出から国民議会における審議・決議、大統領による承認、法律の成立に至るまで、詳細な手続きや管轄が明記されている。他方、施行規則である規定に関してはほとんど記載されていない。各管轄機関のスタッフが自ら企画から法律化までを担っているとみられる。

次に、インドネシアの法制度が日系企業から「難解」であるとされる理由として、3つの事例を取り上げ、説明する。

①法令に係る情報の周知不足

ヒアリングを行ったインドネシア進出企業の多くから、最新の法規制に係る情報を適時入手できずに苦慮しているとの指摘があった。同国では法令の公布後、ただちに官報やウェブサイトにて全文を誰もが閲覧できるような仕組みになっていない。従って、地場企業でさえも、法令の交付後しばらくの間、新しい法令もしくは改正令の存在に気づかないことも珍しくない。

また、法令はインドネシア語のみで作成されるため、日本企業が英文・和文等での情報を入手するまでにはさらなる時間を要することが、ビジネス上の障害となっている。

②法令間の整合性の問題

本来であれば、新法令は他の法令との間で齟齬が生じることがないよう、交付前に綿密なすりあわせが行われるべきである。しかしインドネシアではこのような事前調整が行われておらず、法令間で矛盾が生じる場合がある。

例として、小売業の業態の定義について取り上げる。「大統領令2014年39号」では、外資規制の対象となる業種およびその規制内容が掲載されている。小売業に関しては原則的に内資100%を義務付けているが、例外として、(1)床面積400㎡以上のミニマーケット、(2)同1,200㎡以上のスーパーマーケット、(3)同2,000㎡以上のデパートに関しては、外資の出資を100%まで認めている。

他方で、「商業大臣規定2013年第70号」第6条では、(1)ミニマーケットは400㎡未満、(2)スーパーマーケットは400㎡以上、(3)デパートは400㎡以上、(4)ハイパーマーケットは5,000㎡以上、(5)卸売は5,000㎡以上、と定義している。

前者の大統領令では「床面積が400㎡以上」のミニマーケットは外資の参入を認めるとしつつも、後者の商業大臣規定ではミニマーケットを「400㎡未満」の店舗と定義しており、実質的にこの業態への外資企業の出資は不可能と解釈されている。

③法令の運用の問題

具体的な運用方法が不明確であるため、法令の効力が曖昧なケースもある。

例えば前述の「商業大臣規定2013年第70号」では、モダンストア等(デパート、スーパー、コンビニエンスストア等の近代的な小売業)において、取扱商品の数量、種類とも80%以上を国産品とすることを義務付けている。しかし現地では「在庫は含めるのか」、「種類はアイテム数とSKU(※1)のどちらで数えるのか」、「惣菜など、米と具と調味料の産地がそれぞれ異なる場合はどうするのか」等を巡り、困惑している事業者が多くみられた。そして当局側の回答は担当者によって異なるとのことである。

また、法改正が短期間に行われるケースもある。「商業大臣規定2013年第70号」は発効から間もない2014年9月、高級ブランド等を国産化比率規制の対象外とする旨の改正が行われた(国産品比率規制は地場の中小零細企業の保護を目的としており、当初から高級ブランド等は念頭になかったようだ)。

このように、法令の運用方法が不明確であり改正も頻繁に行われることから、一部の現地企業では「法はすぐに守らなくてもおそらく大丈夫、警告を受けるまでは様子を見よう」とする意識が根強いようだ。日本企業にとって、ビジネスを難しくしている一因となっている。

以上を勘案すると、進出方法が定まっていない段階で漠然と法令の情報収集を行っても、課題が次々と浮かび上がり、なかなかゴールに辿り着かない恐れがある。まずは進出スキームを絞り込み具体化した上で、調査を行うことが望ましい。

また、進出を検討する際に、現地の事情に詳しいパートナーを見つけることは、有力な方策である。法令に関する知識やビジネス・ネットワーク、現地政府との交渉力など、各方面で現地パートナーから協力を得ることにより、スムーズな進出が可能となろう。

(※1)「アイテム」は商品の種類を指し(例:Tシャツ)、「SKU(Stock Keeping Unit)」は在庫管理の単位を指す(例:LサイズのTシャツ、MサイズのTシャツ、SサイズのTシャツ)。

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