アジアンインサイト
ミャンマーにおける観光業への期待と課題

2013年2月14日

  • アジア事業開発部 コンサルタント 江藤 哲寛

1960年代の高度成長期、日本は東京オリンピックに沸いた。東海道新幹線が開業し、高速道路の開通も相次いだ。その当時の1人当たりGDPとほぼ同じ水準にあたる国が現在のミャンマーである。2011年に民主化への舵を切ったことにより、飛躍的に経済が発展すると期待されており、昔の日本を見ているようなどこか懐かしさを感じるミャンマーを、次のバカンス候補地として選んでみてはどうだろうか。

アジア最後のフロンティアとして名高いミャンマーを訪れるビジネスマンやツーリストが増加している。アジア開発銀行は、同国における観光業は今後最も重要な収入源になり得ると分析している。2012年の外国人入国者数は100万人を突破しており、前年比で30%増加した。2013年は前年比15%増になると予想されており、観光収入は3.9億ドルに上り、本分野だけで5万人の雇用機会をもたらす見通しである。同国中央統計局によると、日本人入国者数は2012年の1月から7月までの間で11,893人、2011年同時期の5,808人と比べるとほぼ倍増しており、観光市場拡大の兆しが窺える。

2013年12月11日から2週間にわたって開催されるASEAN版オリンピック「SEA Games」や2014年ASEAN議長国就任、2015年ASEAN経済統合など、同国にとって世界に民主化をアピールできる国際的イベントが目白押しである。そのため内外から経済成長への期待が高まり、宿泊施設や新空港建設など観光市場への投資も活発化している。また、同国は2月26日から3日間、ミャンマー宿泊観光会議を開催する。同国のホテル観光省や各省庁の幹部、投資家や開発業者などが一堂に会し、今後のミャンマーの観光業におけるマスタープランを発表・共有することとなっている。このように、ミャンマー政府は観光業について国家の戦略的事業として構想を練っており、観光大国タイやシンガポールなどをお手本に開発・発展していくと考えられる。

全日空は、昨年10月に成田-ヤンゴン間の直行便を12年ぶりに復活した。アジア諸国も定期便就航を決めており、同国へのアクセス環境が整いつつある。そんな期待の高まる未開の地ミャンマーに対し、日本政府は援助のための円借款供与再開へ踏み切る方針を固めている。2012年12月に発表された国際協力銀行のアンケート調査では、日本の製造業企業において中期的な事業展開有望先国としてミャンマーが米国に次ぐ10位に初めてランクインした。このことより、前年の19位から順位を上げたミャンマーへの期待が窺える。日系大手商社も、経済特区開発を進めるなど、日本政府の強力な後押しのもと、オールジャパンの体制で同国のインフラ改善に取り組んでいる。

以下、ミャンマーにあって外国人が直面する喫緊の課題を3点取り上げてみたい。

1. ホテル、フライトについて
同国は現在、日本をはじめ各国の支援を受けながら各種インフラ整備への青写真を描き始めた段階だ。そのため、気軽に訪れるには課題もある。例えば、宿泊先と航空券確保の難しさが挙げられる。ホテル数はミャンマー全土で800箇所、部屋数にすると28,000室であり、出張者や観光客の急激な増加に伴い宿泊先が不足している。そのため宿泊価格が高騰しており、そのクオリティに対し割高感を覚えるのは否めない。ミャンマー政府はこれに対処するため、2013年末開催の「SEA Games」までに8,000室を増やす予定であると発表している。また、昨年11月に改正された外国投資法では、これまで禁じられていた個人や民間企業の土地使用権について、土地の賃借が認められることとなった。これによりホテル投資の拡大に期待が高まるだろう。フライトに関しては、前述した全日空の直行便が就航しているものの、まだ週3便のみの運航である。座席数も34席と少なく、直行便を利用するには便数の不足が課題として挙げられる。今後の各航空会社の動きに注視したい。

2. 決済方法について
欧米による経済制裁を受けていたこともあり、クレジットカード決済が可能な場所は高級ホテルなど限定的である(*)そのため、現状はキャッシュによる決済が主流にならざるを得ない。昨年、大手クレジットカード会社数社が参入を決めており、現地金融機関との提携を発表している。人材育成やシステム構築、インフラ整備などを考えるとミャンマー全土におけるカード決済の普及には少々時間を要するだろう。
*シンガポール経由での決済となるため数%の利用手数料が発生する

3. 通信環境について
日本に住んでいればどこへ行ってもほぼインターネット通信が可能な環境下にある。そのような環境に慣れてしまっている場合は、ミャンマーの各種通信環境についても気になることだろう。
現在ミャンマーでは、一部のホテルや施設などではインターネット通信の環境自体がなかったり、整備されていても通信が安定しないなどの課題がある。弊社調査によると、高級ホテルなどに敷設されているWi-Fi回線速度は約1Mbps程度で、Webサイトの閲覧やメールの送受信、SkypeなどのVoIPを使った音声通話程度であれば可能であるが、通信回線の増強や安定化などは今後の課題だ。インターネット環境と同じように、固定電話や携帯電話環境についても脆弱なインフラ課題として挙げられる。日本の携帯電話キャリアも国際ローミングを実現しているものの、他ASEAN諸国と比べると約2倍の価格設定がされているため割高である。携帯電話の普及率が10%にも満たない同国であるが、政府は今後3年間で80%まで引き上げることを目標としており、今後の改善が期待される。

おわりに
ミャンマーの国民の9割が敬虔な仏教徒(上座部仏教)である。これまで彼らと食事を共にしてきたことから推し量るに、五戒を可能な限り守っていることが伺い知れる。牛肉や豚肉を好まず、お酒を楽しむことも多くない。穏やかな性格をもつ人が多く、笑顔が絶えず、怒ることを知らないようにすら思えてしまう。これらは輪廻転生の考えから、次の人生においても幸せでありたいと願い、現世で徳を積むためのものであるようだ。手付かずの自然や遺跡・寺院の宝庫であるミャンマーで、彼らの笑顔と共に観光を楽しまれてはいかがですか。

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