「子供1人10万円政策」に賛成

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2009年03月27日

日経新聞の3月23日朝刊の「インタビュー領空侵犯」欄に、大和証券グループ本社の清田会長の提言が出た。要旨は、「子供を産んだら1人あたり毎月10万円を支給。財源は、消費税ではなく、国債の発行で。将来につながる支出で、消費や年金などの社会保障や将来の税収にもプラスの効果があるので、借り換えながら60年で償還。」という内容である。個人的に大賛成で、是非、この政策提言を次回の補正予算に組み入れていただきたいと思い、ペンを取った次第だ。

現在の経済状況は、「100年に一度」もしくは「戦後最悪」のピンチに瀕している。しかも、輸出主導型の日本経済は、アメリカなどの消費低迷で、曲がり角に差し掛かっていると思われる。もう外需には頼れない。内需を喚起すべき時だ。

内需を長期的に喚起するためには、やはり人口減少に歯止めをかける必要がある。アメリカでは、ベービーブーマーと呼ばれる世代が消費を牽引してきたし、日本でも団塊世代や団塊ジュニア世代が同様の経済効果をもたらした。内需拡大には、基本的に人口の要因は不可欠であり、また、経済活力の源泉ともなる。もし、このまま何もしなければ、日本経済の潜在成長率は低下してゆくばかりで、活力のない経済社会になってしまいかねない。

政策の効果が出るのには時間がかかる。それだけに、当然、早く取り掛かった方が良い。危機的な経済情勢だからこそ、平時ではできない思い切った国家戦略を、長期ビジョンに基づいて策定し、すぐに実行に移すべきだ。発想を変えれば、ピンチを利用してチャンスに変える絶好のタイミングであり、30年後、50年後を見据えた国策を打ち出し、もう一度政府に対する信頼も取り戻す好機でもあろう。

このような政策に対しては、例えば「金儲けのために子供を産む人が出てくる」など様々な批判・反応が出てくることが予想されるが、大局的に判断すべきであろう。「子供を産んでもらうためにお金を出す」のではない。「子供を産みたいのに経済的制約で断念してしまいかねない人をバックアップする」のであり、その結果として、経済成長にも長期的なプラス効果がもたらされるのである。

子供を産みたいのに産めない社会は、幸せな社会と言えるだろうか。私自身3人の子供の父親として経験上感じることは、育児にこれほどお金と手間(と時間と忍耐力)がかかるものなのかということだ。それだけに様々な喜びも実感できるが、短期的な経済合理性のみを考えると、とても割に合わないものである。それをバックアップするのは政府の使命でもあると個人的には思う。

問題となる財源についても、国債発行でまかなうというプランは現実的であると思われる。消費税を財源とする案は、政治的にも難しいし、また議論にも時間が掛かる。借り換えながら60年で償還という国債のスキームを活用し、将来の経済成長とそれに伴う税収増を担保に、有効な長期投資を行うのは、理にかなっていると思われる。

「子供1人10万円政策」は、回り道のようで、実は根本的な対策である。未曾有の経済危機の中、政府への信頼感も揺らぎつつある。「国家100年の計」ではないが、長期的なビジョンを打ち出し、それを広く国民に説明することができれば、起死回生の一手になるかもしれない。

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