3兆円(日本)と900兆円(アメリカ)の差

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2008年06月23日

  • 木村 浩一

アメリカの投資信託協会(ICI)の統計によると、2007年末のアメリカの年金残高は17.6兆ドル(約1800兆円)に達する。その内訳をみると、IRA(個人退職勘定)が4.7兆ドル、401(k)を含む確定拠出年金が4.5兆ドルを占め、両者を合わせると9.2兆ドルになり、個人型年金が、実にアメリカの年金市場の残高の52%を占め、年金市場の中で中心的な役割を果たしている。

これは、個人型年金の規模の巨大さもさることながら、アメリカでは、年金の半分は、個人が主体的に投資判断し、運用していることを示している。

我が国の状況はというと、確定拠出年金がやっと2001年にスタートし、その残高も3兆円にとどまり、国民においても、自分の年金の相当部分を自らの判断で運用することについて、その用意も覚悟もないというのが現実であろう。日米の証券市場には大きな差があるが、日米の彼我の差の大きさを痛感するのがこの数字である。

ちなみに、2007年の調査では、アメリカの家計の40%、4620万世帯がIRAを保有し、確定拠出年金の中でも401(k)の加入者が5000万人に達している。

また、ICIの調査によれば、投資信託を保有している家計の57%は確定拠出年金を通して初めて投資信託に投資し、投資信託保有者の61%は確定拠出年金を通して投資信託に投資している。

いかに、アメリカで確定拠出年金が普及しているか、そして、残高がGDPの約9割に相当する1200兆円に達し、アメリカの家計の44%、5060万世帯が保有するまでに投資信託市場が巨大化する過程の中で、いかに確定拠出年金が決定的な役割を果たしてきたかが読み取れる。

国民が将来も生活の豊かさを維持するためには、年金制度の整備が不可欠であるが、公的年金が多くの困難を抱えている中にあっては、我が国においても、アメリカのようにIRAの創設と確定拠出年金の拡充が喫緊の課題である。

3兆円と900兆円(9.2兆ドル)。その差はあまりにも大きい。

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