地方公共団体「財政健全化法」の成立

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2007年07月09日

  • 星野 菜穂子
6月15日、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(以下、財政健全化法)が成立した。これまでの地方財政再建促進特別措置法に代わり、財政健全化法にもとづく地方公共団体の新しい財政再建制度が整備されることになる。

旧法に基づく財政再建制度と異なる特徴は、以下のように整理される。[1]財政健全化の過程に「早期健全化」「財政再生」の2段階のスキームが盛り込まれたこと、[2]そのための判断指標として新たな財政指標が導入されたこと、[3]これらの指標のいずれかが一定以上になると「財政健全化計画」「財政再生計画」の策定が義務づけられるこ(※1)、[4]「再生振替特例債」が創設されること、などである。また、公営企業についても、公営企業ごとの資金不足比率が経営健全化基準以上となった場合には、経営健全化計画を定めなければならないなど、公営企業の財政再建を同じ法律に位置づけていることも特色の一つとされている。

財政健全化を判断するための財政指標に関しては、(1)実質赤字比率、(2)連結実質赤字比率、(3)実質公債費比率、(4)将来負担比率、の4つが規定されている。(1)実質赤字比率は、これまでの再建法における赤字比率とほぼ同様のものだが、対象となる会計の範囲が絞り込まれている。(2)連結実質赤字比率は、新たに導入された指標で、これまで対象とならなかった全会計をカバーするフロー指標となっている(※2)。(3)実質公債費比率は、地方債の事前協議制度移行にともない既に用いられている指標。(4)将来負担比率は、新たに導入される、公営企業、公社や出資法人等を含め一般会計の将来負担を把握するための指標で、(1)~(3)のフロー指標に対しストック指標となる。但し、(4)だけは「再生判断比率」から除かれている。さらに公営企業に関しては、上述のとおり、資金不足比率が経営健全化の指標として用いられることになる。

今後は、各指標の算定内容の詳細と健全化判断比率等の基準が定められることになり、注目を集めることになろう。基準設定は、財政健全化法のスキームがどのように機能するかに大きく関わってこよう。また、同法が地方公共団体の財政状況把握を多様化し厳格化する方向性において評価されるとしても、地方分権推進の下、自治体の自主的な財政運営にどのような影響をもたらすのか、についても注視していく必要があろう。

(※1)健全化判断比率(4つの財政指標)は、監査委員の審査に付した上で公表しなければならず、そのいずれかが健全化基準以上の場合は個別外部監査契約に基づく監査も求めなければならない。
(※2)但し、公社や第三セクター等、いわゆる外郭団体を含むものではない。

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