【韓国】日本企業韓国進出のキーワードは「設備投資」

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2006年09月27日

  • 黒坂 慶樹
ここ数ヶ月間の間に日系企業と韓国企業の提携関係構築が相次いで発表された。金融業・製造業・サービス業など多岐に渡る。この背後には韓国国内の設備投資とう共通項が見える。特に筆者が注目しているのは、北越製紙(啓星製紙との提携)の件とみずほ銀行(新韓銀行・韓国産業銀行との提携)の件である。韓国の中堅・中小企業を融資先のターゲットとして定めたみずほ銀行、設備投資の余剰資金がなく北越製紙の製品供給を受ける啓星製紙、である。設備投資の必要性とそのための資金繰りが金融・製造業のキーワードとなり、今後も日本企業の韓国企業との提携は増加していくだろう。

韓国では日本同様にメインバンク制が根強い。韓国国内の銀行は、金融危機以降大幅な統廃合が行われ、20行あった大手銀行(BIS比率8%以上)も現在は9行。外資系に買収されたり、持ち株会社の傘下に入ったりしている。国内企業から見れば、融資してくれる銀行が減ったことを、すなわち融資額の減少を意味する。日本の銀行は不良債権処理を終え、足許過去最高益を記録している。余りある資金の下、国内外を問わず融資先を探している。日本の銀行と韓国の事業会社の資金ニーズが一致しているため、日本から韓国企業への資金の流れは活発になろう。

北越製紙と啓星製紙との提携は、北越製紙で製造した印刷用紙を啓星製紙に供給し啓星製紙の同製品の製造ラインを廃棄するというもの。素材業種では国内需給に限らず、中国の台頭によりアジアの需給が業績を左右している。中長期的には、紙・パルプ業界は供給過剰に陥る可能性が高く、日本国内でも王子製紙が北越製紙にTOBをかけるなど早急な再編を必要としており、同2社の提携により若干の需給調整はなされるであろう。中小財閥系企業や、独立系企業は総じて資金繰りが厳しいため設備投資資金も乏しく、必然的に再編への道を歩む可能性が高い。北越製紙をきっかけとして中国企業が脅威となりつつある素材業界を中心に、地理的にも近い日本企業を提携先に選ぶ企業も少なからずあると思われる。

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