コラム

2005.03.02
|

投資戦略部 古島次郎
親子上場の現状
 
 上場親会社と上場子・関連会社の関係は、経済環境、各企業の経営戦略のみならず、上場審査基準の見直し、連結会計基準の導入、商法改正などの諸制度変更の影響を強く受けている。有価証券報告書開示ベースで見た親子上場の件数は趨勢的に増加傾向にあった。これは、(1)96年の親子上場基準の緩和、(2)99年のITバブル、(3)00年からの連結財務諸表制度の改正に伴う連結対象子会社範囲の拡大、などが要因と考えられる。しかし、01年度をピークに親子上場の件数は減少傾向にある。

連結経営の状況を詳しく見ると、連結を開示している上場銘柄数とその連結開示銘柄1社当たりの連結子会社数も増加傾向が続いている。全体としては、連結経営戦略に大きな変化があったわけではないようだ。しかし、連結子会社を上場している上場親会社数は01年度をピークに減少、同時に上場親会社1社当たり上場連結子会社数も同時期を境に低下傾向にある。90年代を通じて進められてきた連結子会社を上場するという資本戦略に変化が生じているようだ。

ITバブル崩壊後、市場からのプレッシャーの強まりなどにより、事業の選択と集中がより強く意識されるようになった。そのなかで、コア事業の意志決定等の迅速化、将来収益の完全な取り込み、などのためコア事業に関連する子会社を完全子会社化する必要性が高まってきた。この流れを推し進めたのが、99年の株式交換・株式移転制度の商法・税制面での整備である。それまで煩雑であった完全子会社化時の手続きが簡素化されコストが低下した。

完全子会社化の諸制度整備後、完全子会社化された上場企業は急増しているが、親会社でない上場企業による完全子会社化の事例は少ない。そのほとんどが親会社による上場子会社・関連会社の完全子会社化である。グループ内で上場子会社・関連会社の取り込みが加速したことが見て取れる。しかし全ての企業グループが、このような整理を完了している訳ではない。

そもそも以前は、企業グループの資本政策に関わりなく親子上場は、(1)同じ事業の子会社は上場できない、(2)親会社から出向者を受け入れている子会社は上場できない、などの厳しい上場基準により制度的に抑止されていた。しかし、96年に子会社上場基準が緩和され、現在、資本の歪み等が指摘されている親子上場の子会社の多くが上場することとなった。

このところ、一端は緩和された基準等が再び強化されつつあるあるようだ。東証では、来年度から上場廃止となる少数特定者持株比率の水準を80%超から75%超に引き下げる。更に、10月からTOPIXが浮動株調整株価指数化するなど、資本の歪みの一因となっている主要インデックスに対して浮動株調整を行う動きが進んでいる。株式市場の捻れた親子関係は、ファイナンシャル・バイヤーがそこかしこに突然と現れ、一般投資家が取り得無いM&A手続きを用いて解消していくのを待つまでもないようだ。上述のような制度改正により、通常の市場取引を通じて是正されていくものと思われる。


 コラム バックナンバー一覧
| 2010 | 2009 | 2008 | 2007 | 2006 | 2005 | 2004 | 2003 | 
12月11月10月9月8月7月6月5月4月3月2月1月

  
[2005.03.31]  情報管理態勢の確立に向けて
  セキュリティソリューション部 五井孝 
  
  
[2005.03.30]  運用問題に関心を移す企業年金
  年金運用コンサルティング部 大藤康博 
  
  
[2005.03.29]  ウォルマートが指標でなくなる日
  投資戦略部 成瀬順也 
  
  
[2005.03.28]  ペイオフ解禁拡大と為替相場
  経済金融調査部 亀岡裕次 
  
  
[2005.03.25]  日韓の温度差
  ソウル駐在 五百旗頭 治郎 
  
  
[2005.03.24]  『公正な労働』の実現に向けて
  経営戦略研究部 河口真理子 
  
  
[2005.03.23]  公益法人制度改革への“当事者”の関心
  資本市場調査部 市川拓也 
  
  
[2005.03.22]  利益水準の拡大で上昇余地大きい香港市場
  DIR香港 由井濱宏一 
  
  
[2005.03.18]  アーキテクチャと様式美
  システムソリューション事業企画部 小原誠 
  
  
[2005.03.17]  政治の季節を迎える欧州
  DIRヨーロッパ 岡田恭二 
  
  
[2005.03.16]  私立学校法改正
  資本市場調査部 内藤武史 
  
  
[2005.03.15]  ストック・オプション、次の課題
  制度調査部 齋藤純 
  
  
[2005.03.14]  「金融コングロマリット」時代とは何か
  産業コンサルティング部 瀬越雄二 
  
  
[2005.03.11]  組織の壁と知の壁
  情報技術研究所 栗田学 
  
  
[2005.03.10]  公開買付け終了後のライブドア問題の現状
  資本市場調査本部 吉川満 
  
  
[2005.03.09]  中国ベンチャーの海外上場
  新規産業調査部 篠原春彦 
  
  
[2005.03.08]  新興市場への資金流入は増加続く
  資本市場調査部 佐藤清一郎 
  
  
[2005.03.07]  減速シナリオを見直す時
  投資戦略部 小林卓典 
  
  
[2005.03.04]  ブログが改めて問い掛けるインターネット時代の情報発信のあり方
  NY情報技術センター 新林浩司 
  
  
[2005.03.03]  エマージング国投信の新トレンド:BRICsファンド
  投信評価研究所 西井和 
  
  
[2005.03.02]  親子上場の現状
  投資戦略部 古島次郎 
  
  
[2005.03.01]  列車の力
  チーフエコノミスト 原田泰  
  


 ※ 執筆者の部署名、肩書き等はコラム執筆時のものになります。


 

コメンテーター一覧

このページの先頭に戻る

コンサルティングインサイト 大和総研のコンサルタントが、実務経験
などを通じた気付きや見解を発信します。
Green Innovation
[グリーン・イノベーション]
マルチな視点で発信する大和総研の
環境関連レポート
IT TIME
[アイティータイム]
研究員ならではの視点で、IT・金融関連の
技術解説やビジネス動向など、さまざまなコラムをお届けします。
研究員が説き明かす
注目のキーワード
ビジネスやプレスの最前線で活躍されてい
る皆様へ。