「健康白書」のすすめ

2017年4月11日

  • 経営コンサルティング第二部 主席コンサルタント 大村 岳雄

企業の持続的な成長には、従業員の活躍と成長が不可欠であり、そのためには一人ひとりの健康が重要である。これまで、従業員の健康に関しては産業保健の枠組みはあるものの、どちらかというと自己責任の問題としてとらえられる傾向にあった。従業員の健康に関しては、出勤しているのに腰痛や頭痛、もしくは花粉症をはじめとしたアレルギー症などで体調がすぐれず、生産性が低下してしまうことをプレゼンティーイズム(Presenteeism)と呼ぶ考え方がある。米国の先行研究によると、このプレゼンティーイズムによる労働損失が直接医療費を上回るという報告がある。

近年、我が国では、健康経営(※1)の概念が広がり始め、従業員の健康増進に積極的に取り組む企業が増えてきている。この背景には、生産年齢人口の減少・人材不足、従業員の高齢化といった実態に加え、政策や法制度による後押しがある。
健康経営を推進する政策の一つに、経済産業省と東京証券取引所の共同による「健康経営銘柄」の認定制度(2015年3月~)があり、上場企業24社が選定されている。また、2016年度には、健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する健康経営優良法人認定制度(※2)も創設され、大規模法人部門(ホワイト500)で235法人が、中小規模法人部門で95法人が初年度認定された。

健康経営の推進は、従業員を大切にするだけでなく、企業のレピュテーションや人材獲得の面でも効果が期待できる。ただ、何から始めればよいのか悩まれる企業経営者も多いのではなかろうか。
そこで一つの提案は、「健康白書」の作成である。自社内の従業員向けの健康への取組を一度洗い出し、これまでの施策の成果を確認するとともに現状の課題をまとめて、次年度の施策を検討するのである。
健康白書は、制度開示として求められているのもではないが、ESG投資の広がりにより、投資家からは従業員の健康への配慮という点で評価されうるし、白書というスタイルでまとめておくことで従業員というステークホルダーに対して、企業としての説明責任が果たせるのではないだろうか。

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(※1)健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
(※2)健康経営優良法人認定制度とは、地域の健康課題に即した取組や日本健康会議が進める健康増進の取組をもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度。健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目的としている。

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