筆者も調査メンバーとして参画した経済産業省「平成25年度日アセアン越境電子商取引に関する調査」(2014年5月)によると、ASEAN主要5か国の自国の電子商取引(EC(eコマース)、ネット通販)および越境電子商取引について、インターネットショッピングの現状や各国消費者行動の一部が明らかになった。電子商取引には、企業間取引(BtoB)、企業と個人消費者との取引(BtoC)、個人消費者同士の取引(CtoC)などがあるが、本稿では企業が個人消費者に直接販売するBtoCを取り上げる。
越境電子商取引とは国際的な電子商取引のことで、日本の企業が国境を越えて、ASEAN主要5か国にインターネットを通じた製品やサービスの販売をする機会について論じたい。
前述の経産省の調査の対象ASEAN主要5か国とはシンガポール、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムのことであるが、本稿ではインドネシアに焦点を当てる(※1)。
インドネシアは、経済成長を続けるASEAN新興国の中でも、人口約2億4,000万人を擁し、巨大マーケットとして注目を浴びている。購買力の原動力の目安となる生産年齢人口(15歳~64歳)も、世界銀行公表のデータでは人口の66%(約1億6,000万人に相当)と算出されている。また、一人当たりのGDPは3,000米ドルを超え、消費市場としての魅力が高まっている。日本からのビジネス展開を行う場合、その巨大市場への販売手段としての、インターネットを活用したBtoC電子商取引の可能性を考えるに当たり、その現状と課題について整理してみた。
インターネットの利用状況等については、図表1に示すようにASEAN主要5か国でのネット普及率はシンガポールが最も高く、インドネシアが最も低い状況である。インドネシアでは公衆無線LANが整備されていないため、インターネット普及が遅れているのではないかと推察される。しかし、ネット人口はすでに約5,500万人に達しており、インターネット環境の改善に伴いネット人口はますます増加するであろう。

ところで、電子商取引におけるインドネシアのネットユーザーの行動を分析すると、自国だけでなく、日本を含む海外サイトにおいても電子商取引、すなわち越境電子商取引を行っていることがわかる。経済産業省「平成25年度日アセアン越境電子商取引に関する調査」(2014年5月)によると、ネットユーザーの約51%が直近1年間で海外のサイトからインターネットショッピングを経験している。また「購入したことはないが、今後購入したいと思っている」まで含めると90%の人が海外サイトを利用した電子商取引に肯定的である。
次に「日本からのオンラインショッピングに関心はあるか?」との問いには、図表2で示すように「ぜひ購入したい」「機会があれば購入したい」と回答した人の合計数が、上位5商品すべてで80%を超えており、日本製品に対する関心の高さがうかがえる。日本製品のクオリティの高さが、インドネシアでも高い評価を受けている証左であろう。日本企業にとっては、このような環境下、キラーコンテンツ(圧倒的な魅力を持った製品・サービス)を有していれば、ジャパンクオリティを消費者にうまく訴求することによって、企業の規模に関わらず、日本に居ながらにしてこの巨大市場を攻略できる可能性がある。

一方で、日本の事業者が越境電子商取引を推進する上での課題もある。図表3では、「日本からのオンラインショッピングで、日本商品を購入する場合、心配なことは何か?」という質問に対する回答である。「関税が購入者負担である」、「配送料が購入者負担である」「配送時に商品が破損する可能性があること」など、関税や商品配達に関する不安をはじめ、いくつかの課題も報告されている。インターネットショッピングを展開する場合、物流や決済などのインフラ整備も重要であるが、自社で解決することが難しい場合は、現地のモール型EC(eコマース)サイトなどを活用することも一案である。
2013年におけるインドネシアのBtoC電子商取引市場規模は約6億米ドルであり、先進諸国と比較すると現時点ではそれほど大きくないかもしれない。しかし、インドネシアにおけるEC市場は今後急成長が期待される分野であり、今後のトレンドを注視したい。

(※1)ASEAN主要5か国のEC事情全体については、2014年10月9日付け本コラム「アセアンのEC事情と日本に向けられた課題」(本谷知彦)を参照
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