アジアンインサイト
取引開始5周年を迎えたラオスの証券市場

2016年1月14日

  • アジア事業開発グループ コンサルタント 後藤 圭佑

ラオスは東南アジアの小国だが、2016年のASEAN議長国を務めることから、国際舞台での注目度が高まっている。AEC発足後初となるASEANサミットに際しては、オバマ大統領も米大統領として史上初のラオス訪問を行う予定であり、首都ビエンチャンでは外交成果が期待されている。また、同国では昨年12月の建国40周年祝賀に続き、2016年は5年に1度の党大会と指導部選出、第8次5ヵ年計画(2016-20年)の正式策定など、国内的にも重要な節目が目白押しである。

そのような中、ラオス証券取引所(Lao Securities eXchange: LSX)も本年1月12日に初取引から5周年を迎えた。「2016-20年ラオス資本市場発展戦略プラン」においては、5年間で上場企業の5倍増(5社→25社)が図られている。本稿ではLSX取引開始5周年の節目に当たり、LSXと現存上場企業5社の概要を紹介したい。

LSXは2010年10月に開所し、翌年1月に初めての取引を開始した比較的新しい株式市場である。LSXの設立は2007年にラオス中央銀行(BOL)と韓国取引所(KRX)が締結した覚書に端を発する。2009年にLSXの資本比率をBOL51%、KRX49%とする合弁契約(Joint Venture Agreement: JVA)が締結され、翌10年の開所に至った。

図表1: ラオス証券取引所(LSX)の歴史

2016年1月現在、LSXの上場企業数は5社にとどまっている。上記年表にて示した通り、LSXへの初上場は11年1月にBCEL(国営銀行)とEDL-Gen(国営発電会社)の2社によって達成されたが、以後3年近くにわたり2社のみの状況が続いた。13年末以降になってようやく1年に1社のペースで民間企業の新規上場が行われており、2015年末にはホームセンターの運営企業であるSouvanny Home Centerが5社目となるIPOを行って上場するに至った。

以下、上場企業各社の概要を紹介したい。図表2は各上場企業株式の概要を、図表3は各社の財務/投資指標をまとめたものである。株価や時価総額については2015年末の数字が取得可能なものの、同年の企業決算は未開示であることから、財務数値は14年決算から取得していることに留意されたい。

図表2: LSX上場株式の概要
図表3: LSX上場各社の財務/投資指標

【BCEL】

Banque Pour Le Commerce Exterieur Lao Public(BCEL)は、ラオスの国有商業銀行である。共産主義経済時代のラオス中央銀行の特別支店(国際業務部門)を前身としており、1989年からは一般の商業銀行として営業している。LSXに上場しているものの、依然としてラオス政府が株式の70%を保有している。また、戦略パートナー(strategic partner)であるフランスのBREDグループが10%を保有しており、一般外国人投資家の保有比率上限は合計10%と定められている。

BCELはラオス最大の商業銀行であり、2014年度末の預金総額は約22兆キープ(約3,250億円(※1))と、預金ベースでの国内シェアは44%であった。(※2)但し、2015年第1-3四半期(1-9月)においては貸し倒れ損失が前年同期比2倍超に膨らんだことから、純利益は318億キープと前年同期(1,142億キープ)に比して大幅に減少しており、15年のROEは10%を大きく割り込むことが予測される。厳しい経営環境を背景として、株価は2014年末の7,500キープから15年末には5,000キープまで下落している。

【EDL-Gen】

EDL-Generation(EDL-Gen)はラオスの国有発電事業会社である。ラオス電力公社(Electricite du Laos: EDL)から発送電分離の構造改革によって分社した事業体で、2010年に設立された。現在でもEDLが全株式の75%を保有している。外国人投資家による保有上限は、EDLの持分を除いた25%である。

EDL-Genの主要発電源は水力であり、設立時にEDLから7つの水力発電ダム(発電容量合計387MW)を継承した他、EDLが出資していた水力発電プロジェクトの持分についても順次譲渡を受けており、2014年末時点の発電容量は合計899MWに達している。EDL-Genは14年にROE、ROAともに10%超を確保しているが、15年上半期の純利益は持分出資プロジェクトからの配当減を主因として前年同期比21%減(2,585億キープ)であった。

【Lao World】

Lao Worldはラオスの展示場/ショッピングセンター運営企業である。2004年にタイの実業家により設立された。民間企業ながら、主たる事業はラオス政府とのBOT契約(※3)に基づく複合施設の建設・運営である。首都ビエンチャン市内でLao International Trade Exhibition and Convention Center(Lao-ITECC)と呼ばれる展示場とショッピングセンター等の複合施設を運営しているほか、同様に100%子会社(Lao World Savan)を通じて南部サバナケット市内でSavan-ITECCを運営している。14年の純利益は152億キープであったが、15年末の株価はIPO価格(10,200キープ)と上場初値(11,000キープ)をいずれも下回る7,350キープにとどまった。

【Petroleum Trading Lao】

Petroleum Trading Lao(PTL)はラオスの石油販売企業である。2008年にラオスの実業家により設立された民間企業で、国内でガソリンスタンドを展開してきた。2014年の国内シェアは17.7%(販売ベース)で、Lao State Fuel Company(=国有石油販売企業、シェア21.9%)に続いて2位である。(※4)14年の純利益は197億キープであった。15年7月以降、株価は3,000キープ前後で推移しており、IPO価格(4,000キープ)を下回る水準となっている。

【Souvanny Home Center】

Souvanny Home Centerは、ラオス国内でホームセンターを運営する民間企業である。ワンストップのホームセンターとしてラオス最大手であり、ビエンチャン市内に4店舗を構えている。また、三菱電機のエレベータ・エスカレータの販売も独占的に手掛けている。2014年の純利益は213億キープであった。15年12月11日に上場し、以来IPO価格(3,100キープ)を上回る価格で取引されている。15年末の株価は3,300キープであった。

LSXは、先述の通り2020年末に向けて上場企業を25社以上にまで増やす計画である。単純計算では、16年から20年にかけて年間4社(四半期に1社)の新規上場を確保せねばならず、候補企業の発掘が重要となろう。現地では上場を図る民間銀行の声も耳にしており、上場希望企業が皆無ということはないようだ。また、経済発展とASEAN近隣諸国との競争が進めば、地場民間企業の資金調達ニーズは自然と高まろう。ただし、長期にわたってIPO価格を下回る水準で取引される銘柄ばかりが増えるとLSXにおけるIPOのプロセス、デューデリジェンスや価格設定への信認も揺らぎかねない。上場審査基準をむやみに緩めたり、不適切な価格設定が行われたりすることのないよう配慮しながら、堅実かつ着実に資本市場拡大を図ることが望まれる。

(※1)2014年末時点の為替レート 1 LAK ≒ 0.01481 JPYにて計算
(※2)BOL (2015), Monetary Statistics Report Q2/2015、BCEL(2015), Annual Report 2014より筆者算出
(※3)BOTは、Build-Operate-Transferの略語。官民連携事業にて用いられる契約形態の1つで、民間企業が施設の建設と維持管理・運営を行い、一定期間の後に所有権を官側に移転することを取り決める。
(※4)PTL (2015), Annual Report 2014

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