三度目の正直を期待したい~実効性の確保が求められる財政健全化計画

成長力強化と歳出改革を実現すれば20年度にPBが黒字化する可能性

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2015年07月23日

サマリー

◆財政健全化レポートシリーズNo.2となる本稿では、2015年6月30日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015」に盛り込まれた財政健全化計画である「経済・財政再生計画」について取り上げる。


◆9年ぶりと言える今回の財政健全化計画は、歳出・歳入改革をも成長志向で政策を構築するという点が特徴である。公的部門の効率性向上、公的ストックや民間資金の有効活用、官民を通じた人材の最適配置の促進によって成長力を強化するなど、新たな付加価値創造のための政策の積上げを通じた財政健全化を目指している。


◆2016~18年度の国の一般歳出増加額や2018年度のPB対GDP比に関して具体的な数値が示されたが、いずれも「目標」ではなく「目安」とされた。また、各年度の歳出を一律に抑制することはせず、今後の経済・物価動向等を踏まえるとされるなど、政策の柔軟性確保と計画達成の確度とのバランスも議論がありうるところである。


◆社会保障分野では、医療・介護を中心に検討事項ながらも多くの改革メニューが盛り込まれた。中でも目立つのは「負担能力に応じた公平な負担・給付の適正化」であり、これまでの取組みをさらに強化する施策が検討される。また、「薬価・調剤等の診療報酬及び医薬品に係る改革」では、後発医薬品の使用を促進するために従来の目標の引上げが明記された。新たな目標を達成した場合、従来の目標のケースと比べ、実質医療費は2020年度時点で0.8兆円程度減少すると試算される。


◆当社マクロモデルで試算すると、成長力強化や歳出・歳入改革を計画の目論見通りに実現していくことができれば、PBが2020年度に黒字化する。ただし、デフレ脱却後に名目歳出額を横ばいや抑制的な増加にとどめるためには、相当な戦略やルール、政治的リーダーシップが求められる。また、成長力強化を財政健全化計画の前提条件とする以上は、それが“楽観的な前提”とならないよう、成長戦略を担う組織や会議体等との連携を深め、2%超の潜在成長率の実現と財政健全化計画との結びつきをより明示的に取り扱った改革の進捗管理が必要ではないか。

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