サマリー
- 経済見通しを改訂:19年度+0.8%、20年度+0.4%:2019年7-9月期のGDP発表を受けて、経済見通しを改訂した。改訂後の見通しは従来通り2019年度が前年度比+0.8%、2020年度が同+0.4%であり、大きな変更はない。先行きの日本経済は、潜在成長率を若干下回る低空飛行を当面続ける公算が大きい。最近の日本経済の懸念材料は「輸出の不振」であり、外需の低迷を底堅い内需が相殺する構造が続いてきた。しかし、駆け込み需要の反動や、消費増税に伴う負の所得効果などを踏まえれば、内需の力強い成長を見込むことは今後難しくなってくる。他方で一部の仕向け先・業種において輸出に下げ止まりの兆しが見られていることなどもあり、成長率の底割れは回避される見通しだ。
- 論点①:内需と外需の乖離は続くのか?:輸出が減速する中でも内需が堅調さを維持しているのは、一部の品目の輸出が底堅く推移することで、輸出全体の落ち込みが緩やかであることに加え、輸出の減少が国内への波及効果が小さい業種に偏っていることが要因である。これまで堅調を維持してきた輸送用機械など、波及効果が大きい業種の輸出は減速する可能性が高まっており、これまで堅調だった内需についても、今後減速懸念が生じるとみられる。一方、これまで軟調だったハイテク関連製品の輸出には既に底打ちの兆しが見られており、輸出全体として底割れする可能性は低く、内需の減速によって内外需の乖離は徐々に収束に向かうことになろう。
- 論点②:財政余力の国際比較と日本の財政政策の方向性:財政余力とGDPギャップを先進32ヶ国で比較すると、ドイツや英国などでは財政余力が大きく、景気刺激策の必要性も大きい。反対に、日本や米国などでは財政余力が小さく、景気刺激策の必要性も小さい。財政支出の拡大は「ワイズ・スペンディング」を目指して行うべきで、経済状況が良いときには財政余力を高めつつ、民間の成長力強化に資する事業や、中長期的な歳出増への対策に支出することが重要だ。日本の社会資本ストックは国際的に見てかなり高いが、防災・減災関連などの社会資本は相対的な整備の余地がある。先進技術や分散型エネルギーへの投資なども、今後積極的に検討していくことが不可欠になろう。
- 日銀の政策:予測期間中のCPIは、2019年度は前年比ゼロ%台半ば、2020年度はゼロ%台前半で推移すると見込まれるため、日銀は非常に緩和的な金融政策を継続するとみている。米欧中央銀行の金融緩和姿勢が強まる中、当面、小幅な追加金融緩和が視野に入る展開が予想される。
【主な前提条件】
(1)公共投資は19年度+5.3%、20年度+2.4%と想定。
(2)為替レートは19年度108.5円/㌦、20年度108.5円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は19年+2.3%、20年+2.0%とした。
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