医療等情報の二次利用は誰のためか

創薬・医療機器開発のみならず、医療の質の向上や効率化にも活かす

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2024年05月09日

サマリー

◆2024年4月1日、改正次世代医療基盤法が施行された(2023年5月26日公布)。これにより、協力医療機関等の電子カルテ情報等について、従来の匿名加工医療情報 に加え、新たに仮名加工医療情報 を医療分野の研究開発に二次利用できる環境となった。また、同法に基づく匿名加工医療情報と、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)や介護保険総合データベース(介護DB)等の公的DBを連結解析できる状態で研究者等に提供することが可能となり、例えば、入院前後の受診等を踏まえた研究が行えるようになった。

◆今後、医療分野の研究開発を加速していくには、医療・介護関係の公的DBについても、仮名化情報を二次利用できるようにすることが重要である。仮名化情報を用いることで、治療や服薬の影響を、希少な症例なども含めて長期にわたって追跡調査・分析することが可能になる。連結可能な公的DBが一段と拡大していけば、ほぼ全国民の生涯にわたる、さらには世代をまたいだ研究開発も実現する。

◆ただし、公的DBの仮名化情報を二次利用するにあたっては、個人の権利利益の保護とのバランスが課題である。この点、二次利用に関する本人同意を取得しない代わりに、個人の権利利益を保護するための機関の設置や、データの解析環境に一定の制限を設ける方向性が示されている。

◆こうした環境が整備されることでヘルスケア産業の活性化等が期待されているが、医療等情報を提供する人々の十分な理解を得るためには、利活用の透明性を高めることに加え、二次利用による成果を医療の質の向上や効率化等という形で迅速に還元していくことが何よりも大切だろう。

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