第178回日本経済予測 <訂正版>

消費税増税の環境は整ったか?~内需は堅調。海外に一抹の不安~

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2013年09月02日

  • 調査本部 副理事長 兼 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸
  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦
  • 齋藤 勉
  • 経済調査部 シニアエコノミスト 久後 翔太郎
  • 田中 豪

サマリー

  1. 経済見通しを改訂:2013年4-6月期GDP一次速報を受け、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2013年度が前年度比+3.0%(前回:同+3.1%)、2014年度が同+1.2%(同:同+0.7%)である。今回から前提条件として、3兆円規模(真水ベース)の2013年度補正予算編成を想定したことなどから、2014年度の経済見通しを上方修正した。
  2. メインシナリオ:日本経済は引き続き拡大:日本経済は2012年11月を底に回復局面に入ったが、今後も着実な景気拡大が続くとみられる。安倍政権の経済政策(いわゆる「アベノミクス」)は日本経済再生の起爆剤となり得る適切な経済政策であり、とりわけ金融政策は着実に成果を上げている。今後の日本経済は、①米国経済の拡大、②復興需要の継続と大型補正予算の編成、③日銀の大胆な金融緩和を受けた円安・株高の進行、などに支えられて景気拡大が継続する見通しである。今回の景気回復局面は、株高に伴う消費者マインド回復などを背景に、個人部門が好調であった点が特徴的だ。他方で、所得環境、輸出、設備投資の改善は相対的に遅れ気味だとみられてきたが、これらの分野も過去の日米両国の景気回復局面と比べて大きく見劣りするものではない。なお、当社は、①長期金利が上昇すると「アベノミクス」は全体としてマイナスの効果をもたらす、②インフレが進行する中、雇用者所得が増加せず、「アベノミクス」で国民の生活は苦しくなる、という「アベノミクス」に対する2つの批判は根拠が薄いと考えている。今後の課題として、安倍政権は、①社会保障制度の抜本的な改革などを通じて財政規律を維持すること、②規制緩和、法人実効税率の引き下げを断行し本格的な成長戦略を強化すること、などに積極的に取り組むべきであろう。
  3. 消費税増税の環境は整ったか?:今回の予測では、消費税増税の是非を多面的に検証した。現時点で、当社は、「消費税増税を予定通り行うことが十分可能な経済環境が整った」と判断している。前回増税が実施された1997年当時と比較すると、内需は堅調な推移が見込まれる。ただし、中国など海外経済の下振れリスクについては慎重に見極める必要があろう。
  4. 4つのリスク要因:「世界景気サイクル」を検証する:今後の日本経済のリスク要因としては、①新興国市場の動揺、②中国の「シャドーバンキング」問題、③「欧州ソブリン危機」の再燃、④地政学的リスクを背景とする原油価格の高騰、の4点に留意が必要だ。特に、当社は、上記①が、②・③と密接な関連を有している点を強調したい。本予測では、「世界景気サイクル」を検証した。世界の景気サイクルを見ると、過去の局面では米国を中心とする先進国経済が、新興国経済変動の原動力となってきたが、足下では、「先進国=好調。新興国=不調」という形で、両者の間で「デカップリング」が生じている。今回の「デカップリング」発生の原因は、①欧州危機に伴い、欧州系金融機関の新興国に対する融資が細っていること、②中国経済の低迷、③米国が拙速な出口戦略を講ずることへの警戒感を背景とする新興国からの資金引き揚げ懸念、の3点である。米国経済の拡大が続く中で、新興国経済の底割れは回避される見通しであるが、とりわけ中国経済の動向には細心の注意が必要だ。
  5. 日銀の金融政策:日本経済の回復を受け、日銀の追加緩和のタイミングは、2014年度以降にずれ込むこととなろう。消費税増税の悪影響を緩和する意味合いもあり、2014年4-6月期以降、リスク資産(ETF等)の買い増しなどの追加金融緩和が実施される見通しである。

【主な前提条件】
(1)公共投資は13年度+11.7%、14年度▲0.9%と想定。14年4月に消費税率を引き上げ。
(2)為替レートは13年度99.7円/㌦、14年度100.0円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は13年+1.5%、14年+2.6%とした。

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