サマリー
◆円安傾向が続いてきたことで、足下では輸入価格の上昇など円安のデメリットに対する懸念が高まっている。本レポートでは、円安が企業収益に与える影響を確認するとともに、その波及経路に着目しつつ、企業規模や産業によって影響がどの程度異なるのかを検証する。
◆大企業製造業では輸出金額が輸入金額を上回っているのに対して、中小企業製造業と非製造業では輸入金額のほうが大きい。直接的には、純輸出がプラスである大企業製造業にとっては円安の進行は収益を押し上げる要因になる一方で、中小企業製造業、非製造業にとっては、円安が収益悪化要因となる。
◆ただし、円安が企業収益に与える影響は、直接的な輸出入の増加のみでなく、①大企業製造業の輸出増加を起点とした企業間取引の増加、②円安による最終需要の増加などの波及効果についても併せて考えるべきである。こうした波及効果を考慮すると、大和総研による試算では、アベノミクスによる円安の進行によって2012年10-12月期から2014年4-6月期のマクロベースの経常利益は3.0兆円程度押し上げられたという結果が得られた。
◆円安進行は波及効果によって中小企業や非製造業にも恩恵をもたらすとみられるが、最終需要に対する押し上げ効果は、円安が進行した後、数四半期程度のタイムラグを置いて効果が最大になると考えられる。このため、2014年夏場から進行した円安による景気の押し上げ効果は、2015年度以降、本格化する公算が大きい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日