サマリー
◆欧州各国では、オミクロン株の出現によって、新型コロナウイルス(以下、コロナ)の新規感染者が1月にかけて急増したが、新規感染者の推移に比べると、入院患者(重症者)・死亡者の水準は総じて抑制されている。2月に入って、新規感染者数はピークアウトしつつあり、各国は、感染者が高水準の中でも行動制限の緩和に動き出している。
◆コロナ感染の拡大とインフレ圧力の高まりが重しとなり、1-3月期は総じて低成長にとどまるとみられる。加えて、地政学的要因が大きな下振れリスクとして不確実性を高めている。春に向けてウクライナを巡る緊張状態が和らいでいけば、インフレ圧力の一部が緩和し、4-6月期の景気加速への期待が高まっていくだろう。
◆とはいえ、中央銀行の想定を上回るペースでインフレ率が高まっているのが現実である。ECBは、「2022年内は利上げなし」のスタンスからデータ次第の対応にシフトし、BOEは、追加利上げを視野に入れている。ただ、いずれも、過度な金融引き締めが景気回復を妨げる可能性を懸念している。
◆悩ましいのは、高インフレの主たる要因であるエネルギー価格の解釈だろう。企業や家計にとって身近な電気料金やガス料金の変化率は、各国でばらつきが見られる。電源構成やエネルギーの調達先、そして政府の関与の仕方等がそれぞれ異なることが背景にあり、一口に“エネルギー価格の高騰”といっても、国によって受け止め方が変わる。エネルギー価格の変化の差異はインフレ率のばらつきをもたらし、多種多様な国々がいる中でユーロ圏の金融政策を決定しなければならないECBは、どこに基準を置くか、慎重になるだろう。
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