サマリー
◆ユーロ圏では内需が牽引する緩やかな景気拡大が続いていると見込まれる。ここ半年の企業景況感の改善と比べると1、2月の鉱工業生産の伸びには物足りなさがあるが、新車販売は好調で個人消費は底堅く推移している。なお、2月の消費者物価上昇率が前年比+2.0%に急加速してインフレ懸念が意識されたが、これは原油価格上昇に、厳冬による食品価格上昇という一過性の押し上げ要因が加わったもので、3月は同+1.5%に減速した。賃金上昇率の加速をもたらすような労働需給の逼迫はまだ生じておらず、ECBは緩和継続がユーロ圏の持続的な景気回復と物価安定の前提条件との認識を変えていない。コアインフレ率が低水準であることに加え、欧米の政治情勢が不透明であることも、ECBが緩和政策の修正に慎重である理由となっている。
◆英国のメイ首相は4月18日に、下院を解散して6月8日に議会選挙を前倒ししたいとの意向を表明した。翌19日には要件である議会承認も得て、議会選挙の前倒し実施が急遽決まった。首相のねらいは議会における保守党の勢力拡大で、党内対立が目立つ最大野党の労働党から議席を奪取して、保守党が現有の330議席からどこまで議席数を伸ばすかが注目される。一方で、EU離脱に反対している自由民主党、スコットランド民族党なども議席を伸ばすと予想されるが、英国のEU離脱方針を覆すような勢力とはならないだろう。なお、このタイミングで解散・総選挙となった理由として、3月29日にEUに離脱を通告したものの、EU27カ国の意見調整が5月下旬までかかる見込みであることに加え、英国の景気減速の兆候が出てきたことを踏まえ、現政権への支持率が高いうちに総選挙をしてしまおうとの意向もあったと考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
株主提案制度にコスト/ベネフィット分析を
世界で最もアクティビスト・ファンドにとって使いやすい日本の株主提案制度
2024年05月09日
-
医療等情報の二次利用は誰のためか
創薬・医療機器開発のみならず、医療の質の向上や効率化にも活かす
2024年05月09日
-
東証カーボン・クレジット市場の動向と今後の市場活性化に向けた課題
市場活性化の鍵を握るボランタリー・クレジットの活用
2024年05月09日
-
ガバメントクラウドは誰に任せるべきか
国産クラウドの初採用に寄せる期待と懸念
2024年05月09日
-
新興国通貨安は脱炭素に向けた投資の障害に
~通貨バスケットに連動する債券(WPU連動債)で為替リスクを低減~
2024年05月08日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日