サマリー
◆3月15日にオランダ議会選が実施され、注目された反イスラムを掲げるポピュリズム政党の自由党(PVV)は20議席に留まり第一党を逃した。ブレグジットや米大統領選に次ぐポピュリズムのドミノ現象が懸念されたが、選挙戦終盤に失速した自由党の支持率がそのまま反映された結果となった。
◆連立政権樹立には、少なくとも4党の参加が必要であり、政策すり合わせのための協議は相当長引く可能性が高い(連立協議の最長期間は7ヵ月)。三選を果たしたルッテ首相は右派との連立を検討しており、親EUのキリスト教民主同盟や、民主66党との協議が確実視されている。これら三党にキリスト教連合(CU)やその他の少数政党が加わることになろう。
◆ブレグジットや米大統領選と並列して取り上げられた今回の選挙だが、大きく異なる点もある。英米では二者択一の、勝者総取りの投票であるが、オランダは議会選、しかも比例代表制をとる。そのため過激な政党の躍進は難しく、自由党に不利に働いたとの見方もある。自由党の一部政策には共鳴するものの、反イスラムなどの人種差別的な極端な政策には抵抗があり、投票をためらった有権者層が、右傾化しポピュリズム政党の様相を呈した自由民主国民党やキリスト教民主同盟に流れたとみる向きもある。
◆今回のオランダ議会選挙は、今後続く欧州主要国での選挙におけるポピュリズム政党の動向や、有権者の投票行動を読み解く上で重要な試金石であったことには違いない。ただ自由党の敗北をポピュリズム政党の失速と決めつけることは少し早計といえる。本当の意味で、欧州におけるポピュリズムの先行指標となる選挙はフランス大統領選であり、その結果が今後のポピュリズムの方向性を左右するといえる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
株主提案制度にコスト/ベネフィット分析を
世界で最もアクティビスト・ファンドにとって使いやすい日本の株主提案制度
2024年05月09日
-
医療等情報の二次利用は誰のためか
創薬・医療機器開発のみならず、医療の質の向上や効率化にも活かす
2024年05月09日
-
東証カーボン・クレジット市場の動向と今後の市場活性化に向けた課題
市場活性化の鍵を握るボランタリー・クレジットの活用
2024年05月09日
-
ガバメントクラウドは誰に任せるべきか
国産クラウドの初採用に寄せる期待と懸念
2024年05月09日
-
新興国通貨安は脱炭素に向けた投資の障害に
~通貨バスケットに連動する債券(WPU連動債)で為替リスクを低減~
2024年05月08日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日