サマリー
◆「世界経済の減速懸念」が多くの国で景気の懸念材料の筆頭に挙げられる中、ユーロ圏でも輸出統計は7月に続いて8月も前月比マイナスと落ち込んだ。一方、9月の乗用車販売は力強い伸びを記録し、サービス業の企業景況感も一段と改善するなど、内需は堅調を維持しており、7-9月期の経済成長は4-6月期から若干の減速にとどまると推測される。
◆10月以降の景気指標では、フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題がユーロ圏経済にどのような影響を及ぼすかが注目される。VWにとって大打撃であるのは疑問の余地はないが、ユーロ圏の乗用車販売は金利低下、ガソリン価格下落という追い風の中で回復局面に入ったばかりであり、販売急減は回避されるのではないかと予想する。ECB(欧州中央銀行)の最新の銀行貸出サーベイでは、ユーロ圏の銀行が企業向けの貸出にも一段と前向きになっていることが示唆されており、内需の下支え役となることが期待される。
◆英国ではずっと以前から内需好調、外需不振の組み合わせで景気回復が進んできているが、このトレンドに変化は見られない。実質賃金上昇率が8年ぶりの高い伸びとなっていること、低金利、ガソリン価格の下落などを追い風として、堅調な消費が牽引役となって年率+2%台の成長を持続できると予想する。他方で、消費者物価上昇率は9月に前年比-0.1%と一段と低下してしまった。低インフレの原因であるポンドの実効為替レートはこの9月に下落に転じており、また原油価格の急落効果も年末には軽減される。とはいえ、英中銀(BOE)が利上げ開始の判断を下すことができるようになるまでにはしばらく時間を要すると考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
株主提案制度にコスト/ベネフィット分析を
世界で最もアクティビスト・ファンドにとって使いやすい日本の株主提案制度
2024年05月09日
-
医療等情報の二次利用は誰のためか
創薬・医療機器開発のみならず、医療の質の向上や効率化にも活かす
2024年05月09日
-
東証カーボン・クレジット市場の動向と今後の市場活性化に向けた課題
市場活性化の鍵を握るボランタリー・クレジットの活用
2024年05月09日
-
ガバメントクラウドは誰に任せるべきか
国産クラウドの初採用に寄せる期待と懸念
2024年05月09日
-
新興国通貨安は脱炭素に向けた投資の障害に
~通貨バスケットに連動する債券(WPU連動債)で為替リスクを低減~
2024年05月08日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日