欧州経済見通し 金融システム不安の回避が焦点

世界経済のリスク要因となった欧州財政危機

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2011年10月20日

サマリー

◆欧州の財政・金融危機が世界経済の悪化要因となることが懸念されている。欧州経済は7、8月は輸出と生産が持ち直したが、企業と消費者の景況感は9月にかけて悪化傾向が続いた。原因はギリシャ危機へのユーロ圏の対応がもたついたことである。これにより、10月には金融システム不安が高まった。ユーロ圏の銀行は資金調達が厳しくなったことを報告しており、この状況が長引けば、資金の流れが滞り、景気を冷やすことが懸念される。

◆財政問題が金融システム不安へと波及したことを受けて、独仏首脳は「包括的危機対策」を10月23日のEU首脳会議で打ち出すことを表明した。この対策には欧州銀行の資本増強計画と、欧州支援基金の規模拡大案が盛り込まれると予想される。これらの措置は、金融システム不安への対応策であると同時に、金融システム不安拡大回避に必要な「管理されたデフォルト」を実現するための前提条件と位置づけられる。

◆ユーロ圏の財政・金融問題解決への取り組みは、つなぎ融資の段階から一歩踏み込んだ対応に移ろうとしているが、これらの対策は少なくとも短期的には景気にマイナス材料となる可能性が高い。多くの国が財政赤字削減を優先させる必要があるなかで、ECBの金融緩和への期待がますます高まろう。9月の消費者物価の反発は一時的なものと考えられ、早ければ年内にECBが利下げに動くと予想する。

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