サマリー
◆欧州では、景気減速が鮮明となっている。原因の一つとして考えられるのは、各国で採用されている緊縮財政である。そしてこの景気減速が、欧州の財政再建の実現性に対する不安を増幅させるという悪循環が生じている。
◆「緊縮財政ブーム」が景気回復の足かせとなる状況は、当初から欧州当局および国際金融機関で想定されていた。しかし、政治の意思決定の遅延によって、これほどまでに短期的な痛みを重いものにするとは想定されていなかった。
◆景気減速への懸念が深刻化する中、この痛みを伴う財政再建を欧州で一様に進めるべきか?ECBの主張は、景気に配慮して緊縮財政を緩めるといった決断はありえないというものだ。そうであればイタリアのように、市場の圧力を受けて、国内外の信認を得がたい追加の緊縮財政策を提示するのは逆効果である。
◆しかし他方で、ユーロ中核国の一部では、財政再建を一時緩めるという選択肢もあるだろう。内需の底上げ、ひいてはユーロ圏としての統合体の景気の底堅さが、対域内周縁国の救済能力に対する市場の懸念を和らげるからだ。現在の欧州は、景気の悪化とソブリン危機の深刻化というダブルパンチに見舞われた状況にある。この窮状から抜け出すきっかけを政策的な景気下支えに求めることの是非は真剣な議論に値しよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日