サマリー
◆中国財政部は、地方政府債務の抜本的かつ包括的な処理方針を固めた。基本方針となる「地方政府債務残高の整理・処理方法」は、既に地方各レベルの財政部門に意見聴取版として送付されており、必要な修正の後に、数ヵ月以内に正式発表される見込みである。
◆特に、重要な方針は、①地方政府債務を分類し、残高を確定した上で、今後は「減らすだけで増やさない」との強い姿勢を打ち出していること、②地方政府債務を分類して予算管理に組み入れた上で、債務返済に高い優先順位を付けていること、③建設中のプロジェクトのために過渡期を設ける一方、駆け込みを防ぐために2014年9月末までに着工済みのプロジェクトを対象としていること、④地方政府融資平台から政府資金調達機能を切り離し、一部地方政府融資平台の処理を進めようとしていること、である。
◆大和総研は、この「地方政府債務残高の整理・処理方法」を、中国が「無駄な投資と借金を増やさず、潜在的な不良債権を増やさない」方針を固めたものとして高く評価している。もちろん、地方政府債務残高を「減らすだけで増やさない」というのは、多分にスローガン的な色彩が濃く、割り引いて考える必要がある。要は、多少は増加しても、効果的に抑制されればよいのである。一方で、こうした厳しい方針が貫徹されれば、景気が大きく下振れするのではないかと懸念する向きもあろうが、それは杞憂となろう。中国の経済政策は、適度な成長、なかでも安定した雇用との兼ね合いで決定され、それが損なわれそうになれば、景気を下支えする政策が打ち出されるからである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
株主提案制度にコスト/ベネフィット分析を
世界で最もアクティビスト・ファンドにとって使いやすい日本の株主提案制度
2024年05月09日
-
医療等情報の二次利用は誰のためか
創薬・医療機器開発のみならず、医療の質の向上や効率化にも活かす
2024年05月09日
-
東証カーボン・クレジット市場の動向と今後の市場活性化に向けた課題
市場活性化の鍵を握るボランタリー・クレジットの活用
2024年05月09日
-
ガバメントクラウドは誰に任せるべきか
国産クラウドの初採用に寄せる期待と懸念
2024年05月09日
-
新興国通貨安は脱炭素に向けた投資の障害に
~通貨バスケットに連動する債券(WPU連動債)で為替リスクを低減~
2024年05月08日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日