2013年12月26日
サマリー
2013年12月5日に、米国証券取引委員会(the U.S. Securities and Exchange Commission、以下SEC)は、議決権行使助言業に関する意見を聴取するラウンドテーブル(Proxy Advisory Services Roundtable、以下SEC-RT)を開催した(※1)。米国における議決権行使助言業の問題点とそれへの政策対応については、別稿(※2)で記した通りこれまでも様々な調査や検討が積み重ねられてきた。SEC-RTで交わされた様々な意見は、こうした過去の議論の延長線上にあり、新たな見方が示されたわけではなかったものの、機関投資家、投資対象となる上場企業、規制当局であるSECが、議決権行使助言業の在り方について大きな関心を有していることが改めて示されたと言えよう。規制の新設や強化に慎重な姿勢を示すことの多い上場企業や経営者団体が、議決権行使助言業には規制が必要であると論じることへの揶揄もある。しかし、議決権行使助言業者の利益相反の恐れを解消することや、業務の適正さを確保することの必要性については、SEC-RT参加者の間に大きな意見の相違はない。問題は、SECによる規制を用いるべきか否かというところだろう。
議決権行使助言業者としては、利益相反の除去について自主的な開示を行うとともに、業務の正確性を確保する仕組みを作ることで、SECに規制の策定を不要にする方向を望んでいるようであるが、上場企業や経営者団体の懸念を払拭できるかは、なお疑問が残ろう。今後は、規制の要否について更なる検討が積み重ねられるようである。
わが国においては、議決権行使助言業者の影響力や業務の適正さについての関心はあまり強くない。利益相反等の問題があるにせよ、機関投資家に向けて有益な情報を提供しているとして、前向きな活用を検討する意見があることは、(※2)の拙稿で紹介した通りだ。今後のSEC等での議論を参考に、企業ガバナンスにおける議決権行使助言業者の位置づけや機能を考えることも必要だろう。
(※1)SEC “Proxy Advisory Services Roundtable”
(※2)「議決権行使助言業者:公的年金による利用?」(ESGレポート2013年11月21日付け)
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