ビジネスの視点を盛り込んだ新たな開発援助のあり方 ~NPO法人コペルニクのケーススタディ~

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2012年05月18日

  • 河口 真理子

サマリー

◆途上国の貧困撲滅は、国際社会共通の課題であり、国連のミレニアム開発目標には、極度な貧困の撲滅が掲げられている。しかし途上国の最貧層(ラストマイル)は、1日1.25ドル未満の所得で、水も電気もなく日々生きることだけに精一杯の暮らしを余儀なくされている。

◆このラストマイルへの効率的な支援を目的に設立された米国NPO法人のコペルニクは、オンライン寄付で先進国の寄付者が途上国の最貧層を支援するサイトを運営する。コペルニクの特徴は、支援者がラストマイルの生活向上につながる革新的テクノロジーを直接選んで寄付できるところにある。革新的テクノロジーとは、子どもでも50リットルの水が運べるタンク、ソーラーランタン、高効率薪コンロなど安価でシンプル、メンテナンスも容易な製品である。

◆現地での支援の方法においても無償で配るだけでなく可能な限り経済メカニズムを活用し、先進国の寄付者に対してもきめ細かな支援にかかわる情報を提供しており、寄付というより途上国の人たちに援助をしたい先進国の人向けの「開発援助代行サービス」的な色彩が強い。

◆ネット上で、小口の資金をプロジェクトに集めるクラウドファンディングやオンライン寄付市場はその手軽さから先進国で伸びており、コペルニクの収入も2011年は前年比ほぼ倍増の63万ドルとなった。またコペルニクの共同創設者/CEOの中村俊裕氏は、クリントンイニシアチブに登壇したり、ダボス会議ヤング・グローバル・リーダーズに選出されたりと、革新的な社会起業としてのコペルニクへの期待は高い。ただしこの規模では、事務経費をまかなうことも難しい。今後は、善意の寄付を安定的に増やす魅力的な仕組みを提供しつつ、テクノロジーの開発や販売、BOPビジネスへのコンサルなど安定的な収益源を増やしていくことも必要だろう。

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