新経済・財政再生計画は「具体的かつ実効性の高い」と言えるか

計画の実効性を高める上で社会保障改革の加速が不可欠

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2018年06月20日

サマリー

◆2018年6月15日、安倍内閣は新経済・財政再生計画(新再生計画)が盛り込まれた「経済財政運営と改革の基本方針2018」を閣議決定した。国と地方のプライマリーバランス(PB)黒字化の達成時期は2025年度へ5年先送りされた。進捗を管理するため、2021年度にPB赤字対GDP比を1.5%程度、債務残高対GDP比を180%台前半、財政赤字の対GDP比を3%以内、とする3つの中間指標が設けられた。

◆2019年10月の消費税率10%の引上げが明記され、駆け込み・反動減の平準化策、耐久消費財対策の実施が盛り込まれた。だが、既に決まっていた軽減税率制度導入による逆進性の緩和効果は限定的である。また、一部の商品の購入を財政出動や減税で遅らせる耐久消費財対策はワイズスペンディングとは言えない。

◆社会保障関係費について、「実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめることを目指す」ことが「目安」とされた。従来のように金額で示されなかったが、「高齢化による増加分」の定義が明らかにされたため、定義に基づいて算出された歳出額が議論の土台となり、改革モメンタムが維持されることを期待する。

◆歳入は潜在成長率の引上げとデフレ脱却に依存する内容となっており、税収増によってPBを実現できると考えるのは無理がある。景気循環の観点から、計画期間中に景気後退局面に入る可能性も小さくない。従って、計画の実効性を高めるためには、特に社会保障改革の加速が不可欠である。改革工程表の全44項目の着実な推進や、2018年末までに行われる改革工程表の改定、社会保障制度を持続可能にするための基盤固めと呼ぶに相応しい政策を具体化し、早期に実行することが重要である。

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