サマリー
◆金融庁は、2021年8月31日に令和4年度税制改正要望(以下、要望)を公表した。要望では、金融所得課税の一体化(金融商品に係る損益通算範囲の拡大)として、「有価証券市場デリバティブ取引を損益通算の対象に追加すること」が掲げられた。
◆デリバティブに係る損益通算範囲の拡大は、令和3年度の税制改正の審議過程でも議論され「早期に検討する」とされたものである。このため、金融庁は、「金融所得課税の一体化に関する研究会」を設置し、この要望実現に伴う課題や論点を整理している。
◆要望では、研究会の論点整理を踏まえ、まずは、対象商品を「有価証券市場デリバティブ取引」とし、租税回避防止措置として有価証券市場デリバティブ取引に一律の時価評価課税を採り入れること、利便性向上策として特定口座で取り扱えるようにすることとしている。
◆要望が実現すると、株式投資を行う個人投資家がデリバティブを用いたヘッジを行う際の税制面の障害が取り除かれる。他方、有価証券市場デリバティブ取引とFXの損益が通算できなくなることや、有価証券市場デリバティブ取引に時価評価課税が導入されるため納税資金のため上乗せの現金を用意する必要が生じるなどの留意点もある。こうした留意点も含めて新たな制度案に対する個人投資家の理解と支持が広がるかが、要望実現のカギとなるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日