サマリー
◆米国におけるワクチン接種は順調に進展し、3月半ばには1億回に到達した。また、1.9兆ドルの経済対策が成立し、景気回復を促進すると考えられる。大和総研は足下の状況に鑑み、米国の2021年の実質GDP成長率を前年比+7.4%に上方修正した。新型コロナウイルス感染拡大から1年が経ち米国経済はV字回復を実現すると見込まれる。
◆ポストコロナへの移行期待が高まる中、バイデン政権は自身の公約実現に邁進することが想定される。特に注目されるインフラ投資に関しては、長きにわたって米国経済の成長を押し上げることが期待される。ただし、財政は既に「大盤振る舞い」となっており、更なる財政支出の余地は縮小していることから、財源確保のために増税論議が始まりつつある。増税は民主・共和党間での意見の隔たりが大きく、財源が決まらなければインフラ投資の実現もおぼつかない。こうした中、民主党は利益誘導を意味する「イヤーマーク」の復活を試みており、共和党も興味を示している。「イヤーマーク」が復活すれば、両党の協働が実現しやすくなる可能性があるだろう。
◆他方、米国経済がV字回復すれば、注目されるのは金融政策の正常化である。パウエルFRB議長は金融政策の正常化に関する議論を先送りし、緩和期待を維持しようと試みているが、国債利回りは上昇が続いている。今後景気が上振れする場合には、金融政策の正常化に対する注目度は一層高まることになり、金利のボラティリティは一層上昇しかねない。2013年のテーパー・タントラムの再発を回避することに強い決意を有するFRBにとって、どのように市場と対話を進めていくのかが焦点となる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日