米国経済見通し 貿易戦争で高まるリスク

2,000億ドル規模の中国製品への関税では、家計への影響が拡大

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2018年07月19日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆米国政府は、7月6日から340億ドル相当の中国製品に対し、25%の追加関税の賦課を開始した。こうした米国の措置に対し、中国政府も対抗措置として、米国による関税発動と同時刻から、米国による関税と同規模の製品に対して25%の追加関税賦課を開始した。

◆中国が7月6日から報復関税を実施したことで、米国による2,000億ドル規模の中国製品への追加関税が実行へ移される可能性は高まっている。USTRが公表した関税リスト案では、電子機器などの消費財が金額全体の2割強を占めており、仮に関税が実行されれば、家計に対する影響は、これまでの関税よりも大きなものになると考えられる。

◆また、米国による追加的な関税が実施されたとして、中国側が更なる報復を実施すれば、当然ながら米国の輸出産業へのダメージは大きくなる。中国の米国からの輸入金額はおよそ1,300億ドルであり、2,000億ドル規模の米国製品への関税は難しい。中国国内で活動する米国企業への規制当局による監督強化など、関税以外の方法での対抗措置が取られる可能性があり、そうなれば悪影響は単純な輸出入のみの問題ではなくなる。

◆2018年4-6月期の実質GDP成長率は、前期比年率+3.9%と、前期の同+2.0%から加速すると予想する。先行きも米国経済は内需を中心とした景気拡大が続くという見方をあくまで基本シナリオと考えるが、貿易摩擦が今後さらに激化し、内需の成長を阻害するリスクは高まっている。

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