第179回日本経済予測

何故、わが国では賃金が低迷しているのか?~「第三の矢(成長戦略)」の強化こそが日本経済再生の王道~

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2013年11月20日

  • 調査本部 副理事長 兼 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸
  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦
  • 齋藤 勉
  • 経済調査部 シニアエコノミスト 久後 翔太郎
  • 田中 豪

サマリー

  1. 経済見通しを改訂:2013年7-9月期GDP一次速報を受け、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2013年度が前年度比+2.6%(前回:同+3.0%)、2014年度が同+1.0%(同:同+1.2%)である。2013年7-9月期の経済成長率が従来の想定を下回ったことを主因に、経済見通しの下方修正を行った。
  2. 何故、わが国では賃金が低迷しているのか?:現在、わが国では「賃上げ」が最大の政治課題となっている。本レポートでは、わが国で賃金が低迷している理由を多面的に検証した上で、今後の賃金の動向を展望した。第一に、実質賃金の国際比較を行うと、わが国で賃金が低迷しているのは、労働分配率が低いためではなく、労働生産性や企業の競争力などに問題があることが確認できる。すなわち、わが国では実質賃金上昇に向けて、「第三の矢(成長戦略)」の強化を通じた、労働生産性の向上や企業の競争力改善などがカギとなる。第二に、今後の賃金動向に関するシミュレーションを行うと、景気の循環的な回復を背景に、賃金は緩やかに上昇する見通しである。マクロ的な所定内給与も労働需給改善を受けて増加が続く可能性が高い。しかし、循環的な景気回復のみでは、一人当たり賃金の上昇幅は限られる。賃金の水準が過去のピークを上回るためには、政府が、①「第三の矢」の強化(非製造業や医療・介護分野での構造改革)、②非正規雇用問題に取り組むことなどが不可欠だ。企業サイドも、「合成の誤謬」を回避するために、極力前倒しで賃上げを実施するべきだろう。
  3. 「経済の好循環」は本当に起きるのか?:今後、わが国では、政府が目指す「経済の好循環」が本当に起きるのだろうか?第一に、「賃上げ」による好循環という面では、賃上げは「非製造業」などに好影響を及ぼす。特に、定期給与の増加は耐久財を中心に個人消費を活性化させる。ただし、好循環が継続するためには、「賃上げ分を販売価格に転嫁できるか否か」という点がカギとなる。第二に、「設備投資増加」による好循環という面で、設備投資減税には一定の「呼び水効果」が期待される。しかし、わが国では設備稼働率が低迷していることを勘案すると、設備投資の回復力は総じて脆弱なものにとどまるだろう。近年、設備投資の生産誘発係数が緩やかな低下傾向にあることも気掛かりな点だ。そもそも、設備投資の動きは期待成長率の動向に大きく左右される。法人税減税や抜本的な規制緩和などを通じて、企業の成長期待を高めることこそが、設備投資回復の王道なのだ。さらに、本レポートでは、法人税減税の効果を検証した上で、景気動向に関する定量的なシミュレーションを行っている。
  4. 日本経済のメインシナリオ:日本経済は2012年11月を底に回復局面に入ったが、今後も着実な景気拡大が続くとみられる。今後の日本経済は、①米国経済回復による輸出の持ち直し、②日銀の金融緩和を受けた円安・株高の進行、③消費税増税に伴う経済対策の効果などから、引き続き拡大する見通しである。
  5. 日本経済が抱える4つのリスク要因:日本経済のリスク要因としては、①新興国市場の動揺、②中国の「シャドーバンキング」問題、③「欧州ソブリン危機」の再燃、④地政学的リスクを背景とする原油価格の高騰、の4点に留意が必要となろう。
  6. 日銀の金融政策:日銀は消費税増税の悪影響を緩和する意味合いもあり、2014年4-6月期以降、リスク資産(ETF等)の買い増しなどの追加金融緩和に踏み切る可能性がある。

【主な前提条件】
(1)公共投資は13年度+16.2%、14年度▲4.7%と想定。14年4月に消費税率を引き上げ。
(2)為替レートは13年度99.4円/㌦、14年度100.0円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は13年+1.7%、14年+2.5%とした。

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