サマリー
世界経済が正常化に向かいつつある中、日本の輸出は世界的な半導体不足などを背景に伸び悩んでいる。ポストコロナを見据えつつ、輸出の成長力を強化するためには、その余地がどこにあるのかを検討することが有効であろう。そこで本稿では、「マーケットポテンシャル」という概念を利用して輸出額の伸びしろを測定し、日本の輸出増に向けたヒントを探る。
マーケットポテンシャルによれば、主要な輸出先の一つである中国向けの伸びしろは2001 年から縮小傾向にある。これは、日本が対中輸出に関する諸条件を活用して増加につなげることができたことを示唆している。また、米中向け輸出を品目別に見ると、一般機械や電気機器など輸出額の大きい品目に大きな伸びしろが残されていることが分かった。主力品目のマーケットポテンシャルを詳細に分析したところ、輸出先の関税率の低さや比較優位などのアドバンテージを十分に活用することで、輸出額がさらに増加する可能性が明らかになった。国内の労働力や資本などの生産要素を主力分野に重点的に投入することや、FTAなどの利用手続きの簡略化など、輸出企業がより競争力を活かしやすくするような環境の整備が政府には求められる。
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