英国国民投票よりも米国景気

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2016年06月22日

  • 児玉 卓

サマリー

英国のEU残留・離脱を問う国民投票は、同国の国の形を決める重要な分岐点となり得るものであり、その結果が統合欧州の今後を大きく左右する可能性を持つ。結果がどちらに転ぶにせよ、二分された世論が生む社会的亀裂が深刻な後遺症を残す恐れもある。ただし、離脱に伴う経済的インパクトはいささか誇張されてきたように思える。残留派が喧伝してきたように、英国の経済規模が有意に縮小するとしても、それは例えば英国が失う金融ビジネスが、そのままこの世から消えてしまうことを意味するわけではない。最近のグローバル金融市場は、残留優位に買い、離脱優位に売りという反応を示してきたが、やや長い目で見れば、この間のアップダウンはトレンドの中に埋もれてしまう可能性が高い。当面のグローバル経済へのインパクトでは米国景気の行方がはるかに重い意味を持つ。さしあたっての焦点は、雇用、賃金、消費の関係であろう。消費拡大の支えが雇用者数から一人当たり賃金にシフトしつつあるとすれば、米国景気拡大の持続性に対する懸念をより強めざるを得なくなる。世界を先進国と新興国に二分すれば先進国優位、先進国の中では米英堅調、日欧(ユーロ圏)停滞という構図が続いてきた。ユーロ圏経済が低成長ながらも安定的であるなど、ダウンサイドリスクが高じてきたとも考え難いが、世界経済がけん引役を失うシナリオの現実味が増しているようにみえる。

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