サマリー
◆2016年12月22日、イタリア政府は緊急閣議を開き、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)などへの公的救済を承認する政令を成立させた。モンテ・パスキはECBから課されていた12月31日を期限とする民間セクターによる50億ユーロの増資を目指していた。ただ個人等からの債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)や、中核的投資家からの調達を合計しても25億ユーロしか集まらなかったといわれており、増資は失敗に終わり政府に公的救済を求めることとなった。
◆今回、イタリア政府が承認した公的救済はEUの銀行再建・破綻処理指令(BRRD)の予備的資本増強といわれている。この予備的資本増強を活用すればシニア債はベイルイン無しで公的資金注入を認めることができる。さらに今回重要であるのは、この予備的資本増強を使用すると同時に、同行の(ベイルイン対象の)劣後債の投資家に対しても、イタリア政府が補償を与えることである。
◆欧州委員会がこのイタリア政府の公的救済を承認するとなると、2016年のBRRD発効以来、初めて例外条項を認めることを意味する。ジェンティローニ内閣が、EUから国民の痛みを伴わない公的救済の承認を取ることができれば、政治リスクが高まることはない。逆に国民が損失負担ということになれば、庶民の怒りは、再度、反EU政党支持拡大につながる恐れがある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日