2012年09月21日
サマリー
再生可能エネルギーに関するトラブルといえば、太陽光発電装置の購入後の「高すぎる」「解約させてもらえない」「(補助金受領の条件に合わないことを知らされずに)補助金がもらえない」「説明されたような能力を発揮しない(発電実績が想定より大幅に低いため、売電収入も得られない)」というような、いわゆる「訪問販売トラブル」が多かった。国民生活センターが紹介している事例(※1)を見ると、強引な勧誘により購入してしまったケースが多い。国民生活センターでは、「『補助金の募集件数に限りがある』『今ならモニター価格で値引きする』などと言って、急いで契約をさせているケースや、サービスとして家電製品などをつけお得感を強調する」等、「契約を急がせる、お得感の強調、長時間にわたる勧誘等で、冷静に検討できない」ことを問題点の一つに挙げている。
今年になって話題に上ることが多くなったのが、再生可能エネルギーの「投資」に関するトラブルである(図表)。
図表 再生可能エネルギー投資トラブルに関する事例
(注)*印は筆者補足
(出所)各種公開資料より大和総研作成
これらは「劇場型勧誘」と言われる手法をとっている場合が多い。最初に見知らぬ人(A)から、太陽光発電や風力発電の開発や加盟店、あるいはグリーン電力証書等、再生可能エネルギーに関する申込書や案内書が送られたり、買わないかという電話がかかってきたりする。次に違う人(B)から、その権利や案内書を買いたいという電話がかかってくる。最初に権利や案内書を買いたいというBが現れ、その後にAから連絡が来る場合もある。販売数が限られている、ある地域の人しか買えない、等の条件があるため自分(B)は購入できないと説明、代わりに購入してくれれば販売価格以上で購入すると申し出ることもある。トラブルというより、詐欺といっていいだろう。
今までも、「水源地」「外貨」「未公開株」「社債」、最近では「カンボジアの農地」といった「商品」で使われている手法である。訪問販売トラブルと同様、「契約を急がせる、お得感の強調」といった、強引な勧誘方法も駆使している。
訪問販売トラブルも再生可能エネルギー投資詐欺も、消費者庁や製品の関連団体等が、消費者に注意を喚起している(※2)。しかし、劇場型勧誘の被害者は高齢者が多く、被害者意識が薄いといわれる(※3)。劇場型勧誘の「商品」の種類は、土地から有価証券まで多様である。「商品」ごとの業界の活動に加え、業界や省庁を越えた注意喚起の充実も求められる。
また昔からある手法にもかかわらず被害が減らないことから、水際で阻止する対策も考える必要があろう。振り込め詐欺では、銀行窓口での「声かけ」により食い止める例が出てきている(※4)。同様に、「投資金」の引き出しや振り込みの前に気付くことができるように、銀行(※5)等、金融機関と各業界の連携を強化することも考えられるのではないだろうか。
(※1)独立行政法人 国民生活センター 平成21年10月7日「ソーラーシステムの訪問販売のトラブルが増加」
(※2)消費者庁 「未公開株など新たな手口による詐欺的商法にご注意!」
(※3)兵庫県 「再生可能エネルギーに便乗した投資トラブルが急増!~『太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス』での勧誘トラブルが昨年同期の6倍超に~」
(※4)ただし、宅配利用や直接、受け取りに来る等、銀行を使わない(振り込まない)手法をとるものが出てきている。
(※5)一般社団法人 全国銀行協会 全銀協ニュース 平成24年6月14日「『振り込め詐欺撲滅強化推進期間』の実施について」
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
消費データブック(2024/5/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2024年05月02日
-
FOMC 利下げ開始の先送りを示唆
再利上げには消極的、2024年内の利下げ開始は明言せず
2024年05月02日
-
少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示の充実
持分法適用関係についてもCG報告書開示を要請
2024年05月01日
-
ユーロ圏はテクニカルリセッションを脱出
1-3月期GDPは前期比+0.3%、市場予想から上振れ
2024年05月01日
-
新興国通貨安は脱炭素に向けた投資の障害に
~通貨バスケットに連動する債券(WPU連動債)で為替リスクを低減~
2024年05月08日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日