老後資金への不安を抱えているのは誰か

『大和総研調査季報』2022年4月春季号(Vol.46)掲載

RSS
  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼
  • 渡辺 泰正

サマリー

本稿では大和総研「資産形成のためのリテラシー調査」の個票データを用いて、現役層における老後資金不安の実態を分析した。分析の結果、低収入、非正規雇用といった一般的に資産形成余力が小さいと考えられている属性に加え、自営・自由業者、子どもありの属性においても相対的に老後資金への不安が強い傾向がみられた。フリーランスを含む自営・自由業者においては、老後資金の見込み必要額が他の働き方よりも大きい点が分析で示されている。それを補うための私的年金を、フリーランス等が利用しやすい制度設計にしていくことが期待されよう。子育て世帯については、子育て費用の負担が資産形成余力を下げていることで、老後資金不安が強くなっている可能性が示唆された。教育費を軽減する政策に進展が見られるが、子育て世帯の「資産形成支援」という目線の政策も今後必要になろう。

また本稿の分析では世帯収入1,000 万円以上等の、相対的に資産形成余力があるとみられる層においても、一定数、老後資金が不足すると見込んでいる点が確認された。この結果から、老後資金不足への対応として、自助による資産形成を支援する政策も重要であることが再確認された。

大和総研調査季報 2024年春季号Vol.54

大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。

大和総研調査季報(最新号はこちら)

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。