2020年09月08日
サマリー
◆米国労働省が、年金基金の積立金によって購入した株式の議決権行使に関する規則案を公表し、意見募集(パブリック・コメント)を行っている。年金基金が保有する株式の議決権は、年金基金の加入者・受給者の利益に沿った行使をするべきという、従来の米国労働省の見解を明確に示すとともに、規則(Regulation)という形で強制力のある規制を設けるものである。
◆規則案では、保有株式の数量等を踏まえ、年金基金資産への影響を考慮して、議決権行使の要否を検討すべきとしている。全ての保有株式の議決権行使を求めるわけではないし、近年増加している環境や社会問題に関する株主提案に関しては、株価への影響の有無や程度を勘案すると議案内容の精査等にコストを要する対応をすべきか否か、疑問を呈するものとなっている。
◆一方、規則案はガバナンス関連の議案に関しては、精査等にコストを集中させることを認め、むしろ議決権行使を推し進めることになるだろう。
◆翻って日本版スチュワードシップ・コードは、「機関投資家は、すべての保有株式について議決権を行使するよう努めるべき」としている点で、コスト/ベネフィットの観点から疑問がないわけではない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日