企業年金の先行きは縮小か、普及・拡大か

厚生年金基金と同時に、DB、DCにおいても全体的な見直しが進む

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2015年09月03日

サマリー

◆2014年4月に「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律」が施行され1年がすぎ、厚生年金基金は解散又は代行返上が進んでいる。解散後に、他の制度へ移行する企業がある一方で、制度を廃止する企業もある。また、適格退職年金の廃止の影響も一因となり、企業年金制度を導入する企業の割合は低下している。今後の動向によっては、企業年金のさらなる縮小が懸念される中、企業年金の普及・拡大にむけた取り組みが進められている。


◆確定給付企業年金(以下、DB)は、近年、追加拠出等のリスク負担が大きいことから、運用リスクを軽減するようなハイブリッド型制度の構想、弾力的な掛金拠出などが緩和措置として取り上げられている。また、中小企業へ向けて「受託保証型DB」の適用対象拡大などの措置が検討されている。


◆確定拠出年金(以下、DC)は制度導入以降、元本確保型の商品に偏重する資産内容が課題となっている。分散投資を促すよう、運用面の課題の改善、継続的な投資教育、また、中小企業に向けて、簡易型DCの導入、個人型DCにおける規制緩和などが図られている。


◆将来の公的年金の給付抑制が懸念される中、それを補完する役割を担う私的年金として企業年金の重要性は増している。今後はDC、あるいはDBとDCの特徴を合わせもつハイブリッド型制度のような企業と加入者で運用リスクを分け合う形の制度設計も増えていくだろう。同時に加入者の自助努力による資産形成が強く求められており、投資教育をはじめとする運用環境の配慮が最も重要といえるかもしれない。

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