プロジェクト事例:AWSとプライベートクラウドのハイブリッド構成で実現したCRMシステムの全面更改

大和証券株式会社

大和総研では、増大するクラウド案件に対応するため、2021年にCCoE(Cloud Center of Excellence)を設置、人材育成や教育サポート体制を拡充、多くの社員が積極的に自己研鑽に励んでいる。2023年7月にはAWSの認定資格取得数が1,000を超える企業として、「AWS 1000 APN Certification Distinction(※1)」にも認定されている。

今回、大和総研では、大和証券のCRMシステム(顧客情報管理システム)(以下「CRMシステム」)を全面更改した。大和証券では、約7,000名の社員が、お客様の資産情報、投資ニーズや投資履歴を個別に把握したうえで営業活動を行うために CRM システムを活用している。このシステムは初期構築から 10 年以上が経過しており、様々な課題を抱えていた。課題を解決すべくアマゾン ウェブ サービス(以下「AWS」)とプライベートクラウドのハイブリッド方式で、CRMシステムの全面更改を実施した。

課題

ビジネス環境の変化へ対応するため、CRMシステムのリニューアルが必要に

大和証券では、これまでの金融商品の売買による手数料型のビジネスから、お客様との長期の関係構築を目的とした資産管理ビジネスへ変化していく中、CRMシステムに求められる機能も、それに応じた変化を求められていた。初期構築時から長年にわたる機能追加・改修により、多数の機能が具備された結果、 「利用したい機能にアクセスしづらい」、「アクセスに時間がかかる」など、利便性が悪化するという業務面での課題も発生していた。
また、サーバ群のOSなどのサポート切れによるコスト増大の課題を抱えていた。

ソリューション

AWSと既存のプライベートクラウド環境で機能を再配置し、ハイブリッド構成に

機能間の関係を疎結合化し、障害時の影響を抑える目的で、他システムとの頻繁な連携が必要な機能は当社のプライベートクラウド環境にそのまま配置し、その他の機能をAWSに移行するハイブリッドクラウド構成とした。

WEB/AP サーバにはAWSで運用管理を行うマネージドのコンテナサービスである Amazon Elastic Container Service(Amazon ECS)(※2)と AWS Fargate(※3)を利用。DB サーバにはAmazon Auroraサービス (以下Aurora)(※4)を利用した。

また、BCP対策として、AWS大阪リージョンにも環境を構築、パイロットライト(※5)で利用する構成とし、関東地方の広域災害発生時には、短時間で切り替え可能とした。

(※2)AWSが提供する完全マネージメント型コンテナオーケストレーションサービス
(※3)AWSが提供するコンテナ向けサーバーレスコンピューティングエンジン
(※4)AWSが提供する完全マネージメント型のリレーショナルデータベースサービス
(※5)災害対策方法の一つ。別のリージョンで障害発生時に素早くリソースを立ち上げる

CRM構成図

ソリューションを実現するための工夫について、プロジェクトで設計/開発を担当した大和総研の小林は以下を挙げる。

証券システム第一部
アプリケーション
スペシャリスト
小林 洵人

「Oracle DBからAuroraへの移行は、プロジェクトにおける重要な課題の一つでした。AWSの移行ツールを利用しましたが、アーキテクチャの違いによって、期待していた性能が出ないという問題が発生しました。当時はまだ社内に、Oracle DBからAuroraへの移行に関するノウハウが少なく苦労しましたが、社内の有識者とAWSのプロフェッショナルサービスをうまく活用しながら、解決することができました。
また、Aurora を利用することで、参照専用のリードレプリカ(※6)を複数拠点(Availability Zone)に配置することができるようになり、可用性の面でも大きなメリットが得られるようになりました。」(小林)

(※6)読み取り専用のデータベース

プロジェクトの成果

業務/システム課題を解決、人材育成でも効果

プロジェクトの成果として、小林と同じく設計/開発を担当したプラスティ バンダラ バラッマネ(以下、プラスティ)は以下を挙げる。

大和総研
証券システム第一部
データサイエンティスト
プラスティ バンダラ
バラッマネ

「アプリケーションでは、ダッシュボードに機能集約することで、より効率的な業務遂行ができるように改善できました。また、ユーザーごとに画面レイアウトはカスタマイズが可能となり、より柔軟な営業活動をサポートできるようになりました。

インフラ面では機能分離により、負荷の大きい機能を AWS 上に配置することで、障害発生時の影響を局所化することができました。

コスト面では、大半の機能を、運用管理不要のマネージドサービスを利用して構築したことで、保守サポート切れ対応時にかかっていた膨大なコストが不要になり、運用コストを40%以上削減することができました。」(プラスティ)

また、人材育成の面でも、携わった多くの社員が、プロジェクトを通じて知見を獲得できている。2023 Japan AWS All Certifications Engineersを受賞したプラスティは下記のように述べている。

「プロジェクトで得た知識、経験は、AWSの資格取得にも非常に有効でした。プロジェクト終了後も継続して取り組んだ結果、すべてのAWS認定資格を取得することができました。今後は、資格勉強で得た知識とプロジェクトのノウハウ双方を、社内外に共有していきたいと思っています。」(プラスティ)

今後の展望

さらなるクラウドサービスの活用で、お客様のエンゲージメント向上へ

今後の展望について、CRMシステムの保守リーダーを務める山村は下記のように述べている。

大和総研
証券システム第一部
シニアアプリケーション・アーキテクト
山村 累梨子

「システムを利用している大和証券の支店を訪問する機会があり、利用の満足度が高いという評価を直接聞くことができました。特に、アプローチ対象のお客様を可視化するツールは好評で、これまで営業員の肌感覚に頼ることが多かったお客様へのアプローチについて、ツールからの提案により営業員の思い込みを排除し、成功事例が出始めていて非常にありがたいという声をいただいています。
今後は、オンラインミーティングツールやチャットツールなどを連携し、クラウドサービスを活用しながら、オンラインにおけるスムーズなコミュニケーションをサポートしていく予定です。デジタルコンサルティングを強化し、お客様のエンゲージメント向上に寄与するシステム開発に努めていきます。」(山村)

今後も大和総研のプロフェッショナルが大和証券グループ内外に関わらず、AWSを活用した最善なソリューションを提供していく。

※部署名・役職名はインタビュー当時のものです。

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