米国SEC:鉱物資源使用の開示義務

SEC登録企業以外にも広範に影響

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2011年05月09日

  • 山口 渉
  • 横塚 仁士

サマリー

◆2010年7月に可決成立した米国金融改革・消費者保護法(ドッド=フランク法)により、コンゴ民主共和国に源泉を有するタンタル、錫(すず)などの紛争鉱物の使用について、米SEC登録企業に対し開示義務が課される見通しとなった。


◆紛争鉱物の使用が広範な産業分野に及んでいることに加え、米国証券取引委員会が公開した開示規則案によると、直接的に開示義務を負うSEC登録企業だけでなく、これら企業と取引のある企業にも鉱物の源泉調査が必要となるなど、重大な影響が及ぶ可能性がある。


◆このような開示規則が制定された背景として、紛争鉱物により得られた資金が、コンゴ民主共和国における内戦を長引かせ、深刻な人権被害を生起させていることが指摘されている。企業の社会的責任という切り口からこのような資金フローを明らかにする試みだが、開示義務を負う企業の負担が大きいことは否定できない。


◆最終的な開示ルールは未だ提示されていないが、早ければ来年から対応を迫られることから、IT産業などでは自主的な取り組みもスタートしている。人権問題などへの対応については、ISOやGRIなどでも開示に向けた取り組みが強化されており、対応の強化が必須な情勢にある。

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