世界経済
グローバル特集レポート 選挙と政治①

南米、欧州、ミャンマーなどに見る「ナショナリズム」と「民主化」

2015年12月25日

  • 経済調査部 海外リサーチ・ヘッド 児玉 卓

サマリー

◆2015年の政治イベントの中で、政治と経済の相互作用が端的に表れたのが、アルゼンチン、ベネズエラにおける左派ポピュリスト政党の凋落である。資源価格の下落がもたらすばらまき原資の枯渇は、2016年も資源依存国の政治不安定化要因であり続けよう。

◆欧州では2009年末から続く欧州危機に、難民流入の急増が加わり、統合の「遠心力」が増す状況にある。ハンガリーやポーランドなどが、難民受け入れは嫌だが、EUに所属することの利益(補助金)を手放す気はないとするのは、ギリシャが緊縮財政は嫌だがユーロ圏を離脱する気もないとしていたのと同じ構図である。欧州が多かれ少なかれ、こうした造反組を抱えているのはいつものことだが、欧州政治の混迷激化を回避する上で重要なのは、造反組の多少ではなく、このような国々を宥める役割が期待されるドイツなどのコア諸国が、求心力を発揮する意思を維持し続けることである。メルケル首相の支持率低下は危険な兆候であろう。

◆日本での注目度が高かったミャンマーの総選挙は、周知のように野党NLDの圧勝で終わった。今後の注目点は、NLDが「反軍政」、「民主化運動の象徴」という同党のアイデンティティへのこだわりを捨てることができるかどうかにある。特に、経済成長の関係からは、民主化の進展以上に政治の安定確保の重要性が高い。また、そもそも、ミャンマーのような所得水準の低い国で民主主義を根付かせることは容易ではない。

◆2016年の各国政治、国政選挙で最も注目されるのは、言うまでもなく米国の大統領選挙である。これはある意味、ポピュリズムの席巻を成熟した民主主義が阻止得るかを問う選挙でもあろう。ポピュリズムと民主主義の違いを一言で言えば、「うまい儲け話には裏がある」というコンセンサスの有無にある。移民を拒めばイノベーションが陰りを見せ、出生率は低下し、長期的には経済力の減退にもつながる可能性が高い、といったことが理解されているかどうかが問題である。儲け話(便益)と裏(費用)を比較した上で儲け話に乗るのと、裏があることを知らずに、あるいは知ろうとせずに儲け話に走るのとでは大きく違う。米国がどちらであるのか、今のところ判断が難しい。欧州における遠心力の高まりにも、引き続き注意が必要であろう。

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