世界経済 欧州経済
高年齢者雇用レポート④スイス:改めて注目される中高年雇用

2014年2月の国民投票で移民流入数への上限設置を採択

サマリー

◆スイスの男性の労働参加率は、2003年時点で55-59歳は90.0%、60-64歳は66.4%とすでに高水準だったが、2013年にはそれぞれ91.2%と72.0%へさらに上昇している。なお、65-69歳では20%台半ばへ急低下するが、これは公的年金の受給開始年齢が男性は65歳であるためで、年金制度が充実しているスイスでは年金受給が始まれば、そこで仕事を辞める人が多い。

◆一方、女性の労働参加率は男性より総じて低いが、2003年と2013年を比較するとその差は縮小しており、特に50-59歳の女性の労働参加率上昇が目立つ。女性の社会進出と平均寿命長期化に加え、年金受給開始年齢が2000年までの62歳から段階的に引き上げられ、2005年以降は64歳となったことが背景にある。2013年の女性の労働参加率は、55-59歳は78.3%、60-64歳は51.6%、65-69歳は16.2%である。

◆スイスの中高年の就業率は欧州の中で高水準だが、スイス政府はこれをさらに引き上げる必要があると考えている。その理由の一つは、年金制度を将来的にも維持可能なものとするためである。長寿命化と金利低下が年金財政を圧迫していることへの対策として、スイス政府は2014年11月に「老齢保障2020」と名付けた包括的な改革案を議会に提出した。ここには公的年金と企業年金の年金受給開始年齢を男女とも一律65歳とすること、個々人が年金受給開始年齢を62歳から70歳の間で選択できるような柔軟な年金制度とすること、年金財源を補填するために付加価値税の税率を最高1.5%引き上げることなどが盛り込まれている。

◆もう一つの理由は、2014年2月9日の国民投票でスイスへの移民流入数に上限を設ける方針が採択され、今後の労働力不足が懸念されているためである。ドイツやイタリアほどではないが、スイスでも高齢化が進んでいる。移民流入数が制限される見通しとなったことで、国内で活用されていない労働力の発掘が課題となり、その一環で中高年の雇用促進が改めて注目されているのである。

お気に入りへ登録

この記事を「お気に入りレポート」に登録しておくことができます。

このレポートのURLを転送する

  • @

おすすめ関連レポート

お問い合わせ

PDFファイルの閲覧にはAdobe® Reader®新しいウィンドウで開きますが必要となります。お持ちでない方は、アドビ システムズのウェブサイトから無償ダウンロードができます。
なお、Adobe® Reader®のインストール方法は、アドビ システムズ ウェブサイト新しいウィンドウで開きますをご覧ください。

Get Adobe® Reader®

リサーチ

リサーチメールマガジン

大和総研研究員によるレポートやコラム、書籍・刊行物などの最新情報を適宜お届けします。

ダイワインターネットTV

2016年11月16日
トランプ新大統領の今後と金融政策への影響

2016年10月26日
米国大統領・議会選挙のポイント

2016年9月28日
2016年9月FOMCのポイントと金融政策の見通し

書籍

川村 雄介 監修・著、
大和総研 著
『習近平時代の中国人民元がわかる本』

誕生から半年が過ぎようとして、“改革”に力が入る中国・習近平政権。なかでも、人民元は、中国が世界にアピールできる1つの武器となっている。本書では、人民元に対する素朴な疑問から、中国が目指す未来まで分かりやすく解説。そして、変わりゆく人民元に投資する際の留意点なども指摘している。

川村 雄介 監修・著、
大和総研 著
『ミャンマー開国 ― その経済と金融 ―』

民主化政策への転換を図り、開国したミャンマー。本書では、ミャンマーの歴史・政治体制を俯瞰し、人的資本、産業構造、対外関係、金融・財政などを統計に基づき客観的に解説、抱える課題や今後の経済発展に必要な政策についても述べています。ミャンマーをより深く理解して頂くため、多くのビジネスマンに活用して頂ければ幸いです。