中国経済
ミャンマーの政策転換と中国

今月の視点

2012年4月24日

経済調査部 後藤 あす美
ミャンマーのアウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)の候補者が同国の連邦議会補欠選挙に当選後、中国外務省はミャンマーの各政党との関係発展を望む旨を表明するとともに、西側諸国の対ミャンマー制裁の全面解除を強く呼びかけた。軍事政権下ではミャンマーの中国依存が加速したが、転換期を迎え、中国はミャンマーとの新たな連携を模索している。

特に、ミャンマーが1988年に施行された外資受け入れに関する外国投資法を改正する動きは、欧米を中心とする諸外国のミャンマーへの投資意欲を刺激しているようだ。ミャンマーはインフラ整備が急務であるが、タイと同規模の人口を抱え、天然ガス・石油・木材・宝石などの資源に富み、中国だけでなく、インドという巨大な市場と隣接する。ミャンマーでの欧米勢力拡大は中国の優位性に歯止めをかける可能性がある。

ミャンマーの中国依存度をみると、対内直接投資額では、ボラタイルな推移ではあるが、2011年は総額の約9割を中国が占めた。水力発電所や原油・天然ガスパイプラインの建設など大型投資が中心である。貿易では2000年代に入ってから依存度が高く、2010年は輸入の80%を中国に頼っている。ミャンマーで欧米勢力の拡大が想定される中、中国がこの優位性を保つには、同様にミャンマーの輸入相手国として存在感があるシンガポール(2010年の輸入シェア:27%)やここ数年で東南アジア戦略に注力している韓国(同11%)、輸出では中国よりもシェアを持つタイ(2010年の輸出シェア:30%)やインド(同12%)と連携を強化することが得策となろう。

対ミャンマー戦略に限った話ではない。中国は2010年にASEAN諸国とFTA(投資協定を含む)を発効しているだけでなく、現在、ASEAN+6構想を実現するために、アジア各国と経済的な優遇措置を検討している。アフリカなどでみられた中国企業の対新興国投資は単独資本で行われるケースが多かったが、これからは同じ“アジア”に基盤を持った企業とのマルチ提携などが効果的な手法として増えてくるかもしれない。中国企業に対しては、対外進出において質の向上や、サービス産業の輸出が課題とされてきたが、日台韓などの技術力や、インドやASEANの労働力・市場規模を総合させながら、飛躍する余地はまだまだ残されているだろう。

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2016年7月7日
欧州経済・金融見通し ~英国は本当にEUを離脱するのか?~

書籍

川村 雄介 監修・著、
大和総研 著
『習近平時代の中国人民元がわかる本』

誕生から半年が過ぎようとして、“改革”に力が入る中国・習近平政権。なかでも、人民元は、中国が世界にアピールできる1つの武器となっている。本書では、人民元に対する素朴な疑問から、中国が目指す未来まで分かりやすく解説。そして、変わりゆく人民元に投資する際の留意点なども指摘している。

川村 雄介 監修・著、
大和総研 著
『ミャンマー開国 ― その経済と金融 ―』

民主化政策への転換を図り、開国したミャンマー。本書では、ミャンマーの歴史・政治体制を俯瞰し、人的資本、産業構造、対外関係、金融・財政などを統計に基づき客観的に解説、抱える課題や今後の経済発展に必要な政策についても述べています。ミャンマーをより深く理解して頂くため、多くのビジネスマンに活用して頂ければ幸いです。