日本経済予測(四半期)
第187回日本経済予測

アベノミクスは第二ステージへ~米国が「出口戦略」を講じると何が起きるか?~

2015年11月20日

予測のポイント

  1. 日本経済は「景気後退」局面入りの可能性:2015年7-9月期GDP一次速報の発表を受けて、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2015年度が前年度比+0.8%(前回:同+1.0%)、2016年度が同+1.5%(同:同+1.7%)である。足下の日本経済は「景気後退」局面入りの可能性があるが、当社のメインシナリオでは、①アベノミクスによる好循環が継続すること、②米国向けを中心に輸出が徐々に持ち直すことなどから、2016年にかけて緩やかな回復軌道に復する見通しだ。
  2. アベノミクスは第二ステージへ:本予測では、最初にアベノミクスの新三本の矢で強調された“分配”政策について考察した。わが国の厳しい財政状況に鑑みると、高齢者層から若年層へと財政支出の配分をシフトさせることで、合計特殊出生率の改善および労働生産性の向上を実現し、持続的な経済成長を達成するという視点が不可欠だ。また、社会保障制度全体の規模を「ダウンサイジング」して、受益と負担のバランスを回復すると同時に、メリハリの利いたきめ細かい制度設計を行い、国民の将来不安を解消することがカギとなる。他方、2015年末にかけて議論されるとみられている「補正予算」についても、実効性の高い分配政策を講じることが肝要である。こうした観点からは、消費性向の高い低所得者や、所得階級にかかわらず子どもの数が多い世帯への所得再分配政策が効果的であるといえよう。
  3. 米国が「出口戦略」を講じると何が起きるか?:現在、中国をはじめとする新興国経済の減速などを背景に、グローバル経済は深刻な「世界株安・世界生産減」の局面に突入する可能性が生じている。本予測では、米国が早晩「出口戦略」を講じる可能性が高まっていることを踏まえて、過去にグローバル経済が「世界株安・世界生産減」に陥った局面の特徴を概観すると同時に、今後の動向を占ううえで重要な先行指標および深刻な「世界株安・世界生産減」に転落するか否かを分けるメルクマール(判断基準)について詳細な分析を行った。当社は、基本シナリオとして、FEDの利上げペースが景気見合いで行われ、金融市場や実体経済を大きく動揺させることはないと想定しているものの、FEDの金融政策の動向については引き続き慎重に見極めていく必要があるだろう。
  4. 日本経済のメインシナリオ:緩やかな回復軌道へ:日本経済は、GDP統計の需要項目別動向からは正式に「景気後退」局面入りと判定される可能性がある一方で、重要な3つのメルクマールは「踊り場」局面を示唆するなど、両者で明暗が分かれる結果となっている。いずれにしても、日本経済の調整は短期かつ軽微なものにとどまり、2016年にかけて緩やかな回復軌道に復する見通しである。
  5. 日本経済のリスク要因:中国経済の動向を中心に:日本経済のリスク要因としては、①中国経済の下振れ、②米国の出口戦略に伴う新興国市場の動揺、③地政学的リスクを背景とする世界的な株安、④ユーロ圏経済の悪化、⑤財政規律喪失への懸念を背景とする将来的な「トリプル安(債券安・円安・株安)」の進行、の5点に留意が必要である。当社の中国に対する見方は「短期=楽観。中長期=悲観」である。中国経済を取り巻く状況を極めて単純化すれば、「1,000兆円以上の過剰融資」「400兆円以上の過剰資本ストック」に対して、中国政府が600兆~800兆円規模の財政資金で立ち向かう、という構図だ。中国経済の底割れは当面回避されるとみているが、中長期的なタイムスパンでは大規模な資本ストック調整が発生するリスクを警戒すべきであろう。
  6. 日銀の金融政策:日銀の追加金融緩和は、2016年春以降にずれ込むと予想している。日銀は、世界経済の動向やわが国の政治日程などを睨みつつ、慎重に金融緩和の時期を探るとみられる。

【主な前提条件】
(1)公共投資は15年度▲0.7%、16年度▲3.5%と想定。17年4月に消費税率を引き上げ。
(2)為替レートは15年度122.6円/㌦、16年度125.0円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は15年+2.4%、16年+2.6%とした。

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