経済・社会構造分析レポート
新しい財政健全化計画の策定に向けて ~ベースとなる内閣府中長期試算の検証

長期的な視点に立った財政健全化計画の策定が期待される

2015年4月8日

  • パブリック・ポリシー・チーム エコノミスト 神田 慶司

サマリー

◆本稿では、2015年夏までに策定される新しい財政健全化計画に関して、定量的なベースとされる可能性が高い内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」(以下、中長期試算、2015年2月)を概観する。その上で、財政健全化計画の策定に向けて3点指摘したい。

◆中長期試算は概ね半年ごとに公表されているが、経済再生ケースは2014年7月版に近い内容であり、消費税増税が経済に与える悪影響を大きめに見直した点が特徴と言える。一方、2014年7月版で参考ケースとされていたシナリオはベースラインケースに名称が改められただけでなく、経済成長率が保守的に見直されている。

◆いずれのケースも2020年度までの基礎的財政収支黒字化を実現できる見通しにはない。経済再生ケースの公債等残高GDP比は趨勢的に低下していくが、2020年代以降を展望すれば財政健全化の最終目標を実現しているとは言えない。今回の中長期試算は、①“現状継続シナリオ”とも呼べる保守的な見通しをベースラインとして位置づけたこと、②公表される情報が充実したこと、の2つの点で評価できる。

◆財政健全化計画を策定するにあたっては、第一に、ベースラインケースはそれ自体、歳出抑制が暗黙に想定されていることに留意すべきである。現実にはベースラインケースの想定すら満たしておらず、財政健全化計画で盛り込まれる歳出改革は、ベースラインケースで考える以上のものである必要性を認識しなければならない。

◆第二に、経済再生ケースは現時点で実現が相当に不確実なシナリオであり、財政健全化計画の前提とはしにくい。物価や経済成長率などに明確で好ましい変化が認められれば、その効果を計画の中間評価などの際に上乗せするという考え方が望ましいと思われる。

◆第三に、財政健全化の最終目標を実現するには更なる社会保障制度改革が不可欠である。長期的に、社会保障給付費は経済成長率を上回るペースで増加する可能性が高い。債務残高GDP比の趨勢的上昇を食い止め、安定的に引き下げるという最終目標を意識すると、社会保障の給付と負担のバランスの抜本的な見直しについて議論を深める必要がある。

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