経済・社会構造分析レポート
貿易収支、経常収支の論点

~財政問題の視点を交えて~『大和総研調査季報』 2012年夏季号(Vol.7)掲載

2012年9月3日

調査提言企画室 鈴木 準

サマリー

31年ぶりの赤字化をきっかけとして、日本の貿易収支が構造的に変化している可能性について関心が高まっている。貿易収支だけでなく経常収支も赤字化するのではないかという議論も増えている。

貿易収支や経常収支は赤字でも黒字でも問題視される難しさがある。戦後の国際収支をめぐる議論を振り返れば、貿易の利益は大きいこと、輸出は主に世界経済の動向と輸出産業の競争力の2つで決まること、輸入は国内景気と資源価格がポイントであること、自由貿易の価値を認めつつ、それに伴う摩擦に十分配慮すべきことなどが、収支尻を議論するよりも原理的に重要だろう。

名目貿易収支がどのように推移するかは、差し当たり交易条件がカギである。経常収支は所得収支を保守的にみても今後10年間の間に赤字化するとは思われない。もっとも、国内経済の低迷が反映された経常黒字が維持されるのだとすれば、決して望ましくはない。

経常赤字化の懸念は財政問題とも組み合わされて議論されるが、財政問題の本質が経常収支によって左右されるとは思われない。財政問題はそれ自身の問題として、民間経済の活性化と組み合わせて進める必要がある。

大和総研 調査本部が、その長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、経済、金融資本市場及びそれらを取り巻く制度を含め、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。

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