経済・社会構造分析レポート
失業リスクが偏在する脆弱な雇用構造

雇用構造がもたらす必需的品目の需要増加と不要不急品目の需要減少

2012年8月10日

経済調査部 経済社会研究班
エコノミスト 神田 慶司

サマリー

◆日本の完全失業率は緩やかな改善傾向にあるものの、20年といった長いスパンで捉えれば、むしろ趨勢的に上昇している。本レポートでは、その背景にある日本の雇用構造の変化と、それが経済に与える影響を分析した。

◆デフレ下の名目賃金硬直性に直面した日本企業は、以前に比べて賃金調整が困難になり雇用調整を行う傾向が強まったとみられる。日本的雇用慣行が維持される中で、企業は採用抑制や希望退職を募集することで正規雇用を調整しつつ、正規よりも賃金が低く雇用調整を行いやすい非正規雇用を増やしてきた。

◆正規雇用が増えずに非正規雇用だけが増加する状況では、雇用のミスマッチの拡大が失業期間の長期化と同時に発生している。その結果、構造的失業率は趨勢的に上昇し、2011年では完全失業率の約3分の2を占めている。非正規雇用者比率は若年層を中心に上昇しており、正規社員を希望する若年男性が多い。ただし、企業には足下で200万人程度の雇用保蔵者が存在するとみられるため、短期的には正規雇用の拡大が期待しづらい状況にある。

◆雇用構造の変化が個人消費や住宅投資へ与えている影響は無視できないほど大きくなっていると考えられる。雇用形態別に所得・消費構造の特徴を整理すると、近年の非正規雇用者比率の上昇は必需的な品目への需要を増加させ、不要不急の品目への需要を減少させているとみられる。また、低所得にもかかわらず将来不安から予備的貯蓄を行う世帯が増加していることは、平均的な需要の価格弾力性を高めている可能性がある。

◆短期的に脆弱な雇用構造を改善させることは難しい。しかし中期的には、政府が自由貿易協定の締結などを推進することで雇用創出力が増し、正規雇用の増加に繋がるとみられる。また、サービス業へ労働力が移動しやすい環境を整備する必要もある。「正規」と「非正規」の垣根を低くし、失業のリスクを社会全体でシェアするような仕組みを目指すことも必要であろう。

レポートをダウンロードする

お気に入りへ登録

この記事を「お気に入りレポート」に登録しておくことができます。

このレポートのURLを転送する

  • @

おすすめ関連レポート

お問い合わせ

PDFファイルの閲覧にはAdobe® Reader®新しいウィンドウで開きますが必要となります。お持ちでない方は、アドビ システムズのウェブサイトから無償ダウンロードができます。
なお、Adobe® Reader®のインストール方法は、アドビ システムズ ウェブサイト新しいウィンドウで開きますをご覧ください。

Get Adobe® Reader®

リサーチ

リサーチメールマガジン

大和総研研究員によるレポートやコラム、書籍・刊行物などの最新情報を適宜お届けします。

ダイワインターネットTV

2016年11月29日
第191回日本経済予測 トランプ・ショックで日本経済に何が起きるのか?

書籍・刊行物

川村雄介(編)、道盛大志郎(編著)、大和総研(著)
明解 日本の財政入門

財政は全ての人々にとって、意外に身近な存在です。私たちが納めた税は何に使われ、なぜ負担が増えているのでしょうか。本書には、財政に関して知っておくべき知識が重要な38の項目に絞られています。消費税や財政赤字の問題、社会保障制度の課題などについて分かりやすく解説している本書を読めば、財政をより身近に感じられるようになるでしょう。

熊谷亮丸監修、大和総研編著
『リーダーになったら知っておきたい経済の読み方』

本書では、大和総研エコノミック・インテリジェンス・チームの選りすぐりのエコノミストが、経済指標の見方をはじめ、日本や世界経済の現状及び見通し等について、初心者の方でも理解しやすい平易な文章で、ポイントの押さえ方を解説しています。経済についてもっと詳しくなりたい方から、経済を一から学び直してみたい方まで、どんな方でも気軽に読める、面白くてためになる本を目指して執筆しました。是非ご一読ください。